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「叔母さんたち、今日はホテルだっけ?」

 段ボールをずらして座る場所を確保しながら総が訊く。今日は家電類の梱包を解いて設置するので精一杯で、個人の荷物までは手が回らなかった。

「そう。明日は松島に行くらしいよ」

 総に倣って空けたスペースに向かい合って胡坐を掻きながら和弥も応じる。
 同居は不本意だったが、それを表に出すほど子供ではないつもりだ。総を嫌っているわけでもない。というよりも、好いたり嫌ったりするほどの接点がそれまでなかったというのが正直なところだった。

「望実ちゃんたちも随分大きくなったなぁ。中学生?」
「今度中1と中3。生意気でさ」
「和弥がもう大学生だもんね。よその子は成長が早いってほんとだよ」
「そんな変わんないでしょ、総くん」

 何というか、和やかだけれど上辺だけの会話である。
 互いの家族の話をして、和弥がこれから通う大学の話をして、総の会社の話をして……そういう話題が尽きたら、あとは何を話せばいいのだろう。総に気付かれないように、和弥は今日50回目くらいの溜め息をついた。

 仙台の大学を第一志望にしたのは、ただ実家から程よく離れているという理由からだ。関東圏ならば埼玉の実家から通えと言われる可能性があるし、北海道や九州では遠すぎて進学を許してもらえないだろう。そう踏んだ和弥は、仙台のその大学に合格したら独り暮らしをしてもいいという約束を取り付けた。母は渋々頷いたのだが、合格の報せが届くとやはり心配だとごね出したのだ。


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