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3.清潔な住居のための

 仙台駅に降り立つと、見慣れた景色が和弥を出迎えた。大きな鞄を抱え直し、階段を下ってバスロータリーへ向かう。

 大学受験で訪れた時にはあれほどよそよそしく感じられた街並みが、引っ越してほんのひと月かそこらのうちにすっかり「自分の街」になっていた。
 5月の連休を利用して帰省した地元の街も当然和弥には馴染み深い場所だったが、それでもこの仙台に「帰ってきた」と感じる。人間の感覚というのは日々の生活で案外簡単に塗り替えられてしまうものなのだと和弥は思った。


「おかえり和弥」
 マンションの居間の入り口をくぐると、しかしそこは、このひと月で馴染んだ部屋の様子とは違っていた。

「……ただいま」
 なかなか慣れない帰宅の挨拶をもごもごと口にし、和弥は部屋を見渡す。
 数日前に出た時にはそれなりに整頓されていた部屋が、どことなく――いや明らかに、散らかっていた。ローテーブルの置いてあるラグを中心に、服や雑誌が散乱している。

「どうだった? 久しぶりの実家」
 和弥の怪訝な顔には頓着せず、総が話しかけてくる。

「出て1ヶ月しか経ってないんだから、そんな変わらないよ」


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