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「新入生はどこ行ってもメシや酒奢ってもらえるから得だよな」
友人が耳打ちする。
放課後、彼に頼まれてある音楽系サークルの見学に付き添った和弥は、そのまま歓迎会と称する宴会に巻き込まれていた。
「そのぶん来年は後輩に奢るんだぞ」 冷めた口調で囁き返す。声を潜めずとも聞きとがめられる心配はなさそうな馬鹿騒ぎだ。 トイレに立つふりで抜けようかとも思ったが、和弥が離れようとする素振りを見せるたびに一瞬不安そうな顔をする厄介な友人のせいで結局逃げられず、ようやく帰宅できたのは日付が変わる頃だった。
煌々と灯りの点った部屋で、総はローテーブルに突っ伏したまま眠っていたらしい。 和弥が入っていくと目を覚まし、不明瞭な口調で「お帰り」と言った。そこで初めて、帰宅が遅れることについて総に何の連絡も入れていなかったことに気付く。
「ごめん、飲み会だったんだ。晩めし食べた?」
「いや……久しぶりに先に帰れたから、和弥とどっか食べに行こうかと思ってたら、寝ちゃってた」
料理をしようという考えは起きなかったらしい。 それはともかく、申し訳なくて和弥は項垂れた。酔いが一気に醒める。
「ごめん……腹減ってる?何か軽く作ろうか」
殊勝な妻のようなことを言い出す和弥に、思わず総は噴き出した。
「いつもはおれが待たせちゃってるんだから、おあいこだろ」
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