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「國彦さん、おはよ」

 襖を開けて入ってきたのは、長身で細身の青年だった。ジーンズにライダースジャケットというラフな格好ながら、よく見れば時計やアクセサリー、無造作に肩に掛けたショルダーバッグまで高級そうな品でコーディネイトされている。上品なホストの私服といった趣だった。

「おはよう慶吾」

 國彦は枕元の眼鏡を掛け、寝癖のついた頭をばりばりと掻きながら出迎える。

「寝起きの國彦さん超セクシー」

 彼はどう見てもだらしないおじさんにしか見えない國彦に突進し、掛け布団の上からその膝にのしかかる。國彦の私的なパートナーである敷島慶吾は、ショットバーでのアルバイトを終えて恋人の家へ直行したのだった。

「あれ?」

 ハグ、頬擦り、キス。ひとしきり國彦とのスキンシップを楽しんだ慶吾が、今更ながら隣の布団の膨らみに気付く。

「國彦さん、布団から耳出てる」
「捲ってごらん」

 恋人の腰を抱いたまま、國彦は悪戯っぽく促した。耳を隠しきれていなかったたまおが布団の中でびくりと震える。
 慶吾がそっと掛け布団を捲ると、精一杯身体を縮こまらせた、一糸纏わぬ姿のたまおが現れた。慶吾は絶句する。

「たまお、観念しなさい」

 慶吾とたまおとを交互に眺め、國彦は笑った。諦めたように布団に座り直すたまおの頭を撫でる。

「……くにひこさん」

 慶吾が震える声で恋人を呼ぶ。






「……おれも撫でていい?」

 何とも順応性の高いカップルだった。

(2010/04/02)


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