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 昼寝から目覚めたら、一緒に寝ていたはずのたまおがいなくなっていた。家の中にも周辺にもいない。
 慶吾が焦って捲し立てたところによると、そういうことだった。

「……たまおの持ち物は?」
『リュックと帽子と靴がなくなってる。あと……』
「あと?」

『こぐまさん』

 それを聞いて、國彦は胸が詰まった。ぬいぐるみを持って行ったのは、寂しいから? それとも、思い出の品のつもりだろうか。

 いずれにせよ、たまおは身の回りの品を持って自ら出て行ったということだ。誰かが押し入って連れ去ったのだとしたら、さすがの慶吾も気付かない筈はない。
 しかし――

『ね、あいつ、ワーゲンの……あいつに見つかったらたまおちゃん連れて行かれちゃうかも』

 そう、都築がたまおを探している。何を思って出て行ったにしても、外の世界はたまおにとって安全とは言えないのだ。

「たまおはいつ出ていったんだろう」
『おれが起きたとき、まだ隣の畳がちょっと温かかった』

 それならば、慶吾が気付いた時点ではまだそう遠くへ行っていなかったはずだ。しかし、彼が周辺をバイクで走り回っても見つけることができなかったという。

 回線のあちらとこちらに同時に、不吉な沈黙が降りた。



 たまおがそっと家を抜け出した時、家の前の道路には地味なグレーのカローラが停車していた。運転手がたまおの姿を認め、素早くエンジンを始動させる。走って家から離れようとしていたたまおの脇に迫り、後部座席にいた男がその腕を掴んでたまおを車内へと引きずり込んだ。

 あっという間の出来事だった。最悪の事態は、既に現実となっていたのである。

「おい、暴れるな」

 家がみるみる遠ざかる。それ自体はたまおの望んだことだったが、この状況はそうではない。
 押さえ付ける男を全身で振り払い、たまおは車のドアに体当たりした。半ドアになっていたのかそれはあっさりと開き、たまおは車外へとまろび出た。

「停めろ!」

 後部座席の男が蒼褪める。
 たまおは直ぐ様身を起こして走り出そうとしたが、途端に左足に痛みが走る。立ち上がれなかった。

 十数メートル先で停車したカローラから男が走ってくる。いつか大学であかねに声を掛けてきた男だった。

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*急展開。残りあと7話か8話かな〜
視点の処理が…むずかしい…

(2010/06/02)


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