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*本編再開でごわす。
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 両手で上着を掴んだたまおが、なかなか離れない。玄関先で國彦は困ったようにたまおの頭を撫でた。

「寂しいの? 慶吾を起こして遊んでもらいな」

 たまおは小さく頷いた。

「早めに帰ってくるから、ちゃんと待ってるんだよ。いい?」

 たまおはもう1度頷く。尚も寂しげに伏せられた睫毛に國彦は形容しがたい不安を覚えたが、そろそろ出なければ1コマ目の授業に間に合わない。華奢な体躯を軽く抱き締めてから、振り切るように車へ向かった。


「まずったなぁ……」

 昼休み、國彦は研究室で溜め息をついていた。
 今日の夕方から教授会の予定が入っていたことを失念していたのである。入試を控えたこの時季、議題は山積みだ。「早く帰る」というたまおとの約束は、とても果たせそうにない。
 今朝のおかしな様子が気にかかるだけに、そうでなくとも気の重い会議がさらに憂鬱に感じられる。

「いっそ思い出さなきゃよかったものを……いや、それもまずいか」

 ひとりごちたところで、扉にノックがあった。
 どうぞ、と声を掛けると「失礼しまぁす」といつもより幾分テンションの低いあかねが入ってきた。

 来週の授業での発表について相談に来たあかねと話しているうち、話題は自然と亡くなった沼沢のことになる。

「ショックですよぅ。まさか亡くなってるなんて」

 沼沢に憧れめいた感情を抱いていたあかねは意気消沈していた。

「しかもこんなに経ってから発見されるなんてね。気の毒な話だ」
「辺鄙なところで独り暮らしなさってたから……」
「辺鄙なところ?」

 ニュースで大まかな住所は聞いていたが、ぴんと来なかった。

「大学の裏手、谷になってますよね。その向こうの山のふもとに、ほんとにひとりぼっちで住んでいらしたんですよ、沼沢センセ。ちょっと離れたところに小さい集落はあるみたいですけど」
「へぇ……人嫌いなのかな」
「どうでしょう」

 そこで、机の上の國彦の携帯電話が鳴った。

「失礼」

 國彦がディスプレイを確認すると、慶吾からの電話だった。仕事中には滅多なことでは連絡してこないだけに、嫌な予感がする。

「もしもし?」
『國彦さん、たまおちゃんが』

 取り乱した慶吾の声に、國彦は俄に緊張した。

「たまおが?」

『たまおちゃん、いなくなっちゃった』


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*全く宣言通りに更新できてない…5月中に完結とか言ったのは誰〜!?
頻繁にチェックして下さってる方、ごめんなさい…

(2010/06/01)


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