-番外編1-

*ちょっと小休止。
本編とは無関係の番外編です。

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「或るたまおの1日」


 朝5時過ぎ。近付いてきたバイクの音が家の前で止まった。玄関の扉をそっと開閉し、脱衣場で服を脱ぎ、シャワーを浴びる。バーでのアルバイトから帰宅した慶吾が静かに行う一連の動作に、まだ暗い寝室の布団の中でたまおは耳を澄ましていた。國彦はまだ深い眠りのうちにいる。

 やがて酒場の匂いを綺麗に洗い流した慶吾が、たまおの横にするりと潜り込んでくる。
 じっと目を開けたまま待っていたたまおに慶吾は微笑みかけ、優しく頭を撫でた。たまおは嬉しくなって慶吾に擦り寄る。それから、明るくなるまでもうひと眠りするために再び目を閉じた。

 7時になればカーテンの外はもう大分明るい。たまおが目を覚ますと國彦は起き出した後だった。台所で動き回る音がする。慶吾を起こさぬようにそっと身体を離し(この時間、慶吾はちょっとのことでは起きないのだが)、たまおは國彦のもとへ向かう。

「おはようたまお。服を着な」

 たまおは慶吾の長袖Tシャツを1枚着ただけの姿だった。裸で寝たがるたまおとパジャマを着せようとする國彦の、これが妥協点なのである。

 慶吾がたまおに買ってきた服の中から適当に選んで着替えてから、たまおは改めて國彦に近づく。フライパンを扱いながら振り向いた國彦は、今度は片手でたまおの頭を撫でた。たまおが爪先立ちで顔を寄せると、軽いキスが与えられた。
 唇どうしでするこの挨拶が、たまおは大層好きだった。

 朝食を食べて國彦を送り出してしまうと、慶吾が起きてくるまでの間はたまおひとりの時間である。

 たまおは庭に面したガラス戸の前へ行って、庭を訪れる小鳥を眺めた。
 ぴょこぴょこと跳ね回る雀の動きが不思議で、触ってみたいとたまおは思う。しかし以前、ガラス戸を開けて庭へ降り立った途端に雀たちが一斉に飛び立ってしまった苦い思い出があるので、ガラス越しに鑑賞するにとどめた。

 やがて雀にも飽きると、たまおは家の中の点検を始める。
 台所で、壁のフックに掛けてある玉じゃくしとターナーの位置が普段と入れ替わっていたのでひょいと元に戻した(実際、國彦は特別の拘りを持ってそのように配置しているわけではないのだが)。
 居間に吊るしてあった慶吾の上着から強い煙草の匂いがするのに気付いて首をひねる。慶吾が仕事から戻るたび身体に纏っているこの匂いが何なのか、たまおにはわからなかった。國彦も慶吾も煙草を喫わない。

 脱衣場、浴室、洗面所、トイレ、玄関と見て回り(禁じられているわけではないが國彦の書庫には立ち入らない)、もとのガラス戸の前へ戻る。ちょうどよくそこが日向になっていたので畳にぺたりと座り込んだ。暫く庭を見ていると、あまり見かけない灰色の美しい鳥がやってくる。しかし、警戒心が強いのか、もっとよく見ようとたまおがガラス戸へ張り付いた途端、素早く飛び去ってしまった。たまおはがっかりする。

「なにしてんの」

 尻尾をしょんぼりと垂らしたところへ、慶吾が起きてきた。


つづく。
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*本編終わってないのに番外編を書いてしまった。
しかもつづくらしい。

ちょっと…管理人、へろへろでして、今本編を進めるとろくなことにならなそうなので、へろへろな番外編でお茶を濁してみる次第です。ゴメンナサイ!
もうちょっとしたら本編再開しますね。

(2010/05/19)


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