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 玄関先に出てきた國彦に、慶吾は悪戯っぽい笑みを見せた。

「お出迎えなんて、そんなにおれが恋しかった?」
「恋しかったさ。……たまお、顔色悪いね。バイクに酔ったか?」
「それが、さっきね……」
「中で聞かせてくれ」

 帰り道での出来事を話そうとする慶吾の背中を押し、たまおの手を引いて、國彦は玄関をくぐった。


「たまお、知ってる人だった?」

 國彦の作った甘いミルクティーのカップを両手で包み、たまおは小さく頷いた。

「つづき」
「つづき……都築? あいつの名前?」

 慶吾が勢い込んで聞く。

 たまおは目を伏せ、黙り込む。
 ひと口も飲まれないまま、カップの中の液体はゆっくりと冷めていった。

「4、50代って言った?」
「うん。でも、若作りだったけどもうちょっといってたかも」

 いずれにせよ、あかねの遭遇した男とは別人ということになる。

「それと、これはただの勘なんだけどさ……」
「ん?」
「何となくだけど、そいつ、國彦さんと同業のような」
「研究者ってこと?」
「うーん……ほんと、根拠はないんだけどそんな感じ。インテリ臭がした」
「インテリ臭ねぇ」

 國彦は相変わらず俯いているたまおをちらりと見た。

 そこで突然、慶吾が「あっ」と声を上げる。

「國彦さん……」
「何だ」

「あかねって誰」

 昨夜たまおは、慶吾がいなかった期間のことを唐揚げを食べながら一生懸命語った。そこに出てきた、大学で遊んでもらったという「あかね」なる女性のことを、慶吾はずっと気にしていたのである。

「藤倉あかねさんはうちのゼミの院生だ。……しまった」
「何」
「彼女に電話しないと」
「何で!?」
「たまおを心配してる」


 1コールで電話に出たあかねは、たまおの無事を知って喜んだ。

『ところでせんせぇ』
「はい?」

『そろそろいらっしゃらないと、2限の授業に間に合わなくなっちゃいますよぉ』

 時計に目を遣り、國彦は口をあんぐりと開けた。

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*昨夜、サーバーさんの不調とメンテナンスで一時的に接続ができなくなっていたようです。復旧してよかった〜
ダックスのメンテくんには会えましたか?(笑)

(2010/05/09)


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