◆11/27(Sun)22:47
ヴィクトル・ニキフォロフ
小ネタに上げるほど長くもない小話。のはずだったんだけど意外と長くなってしまった。まぁいいや(笑)
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(付き合っている)
「あ、そういえばヴィクトルさんは……なんですか……?」
久々に二人きりで出掛けている最中、ふと無言になったのでなにか話題を切り出そうとすると、じっとりとした目で見られて私は首をかしげることしかできなかった。まだ何も言っていないのだから、そんな顔をされる理由もわからないというものだ。
「君ね、もうそろそろその他人行儀なのやめにしない?」
「え?」
「ヴィクトルさん、ってのだよ!付き合ってるんだし、ほら、呼び捨てでもいいんだよ?」
にこ、とヴィクトルさんは笑う。綺麗な人だ。こんな人が私の恋人だなんて……というのは今日まで何度考えたかわからない。未だに夢かと思うこともある。
「ええ、と……」
「ほら、簡単でしょ?ヴィクトル、ヴィクトルだよー、言ってごらん?」
まぁ、確かに、言われたこともわからなくもない。何となく気恥ずかしくて未だによそよそしい呼び方をしているけども、ヴィクトルさんが不満に思うのも仕方がないのかもしれない。
ヴィクトル、かぁ。頭のなかでならなんとかなるけど……と考えて、ふと、前に調べたことが頭をよぎった。どうせなら、どうせ恥ずかしいのなら、もっと……。
「ほーら、まだー?」
「…………ヴィーチャ……」
「……え?」
駄々っ子のようにじたじたしていたヴィクトルさんがぴたっと動きを止めてじっと私を見るので、しまった間違えた!と顔が赤くなるやら青くなるやら。しかしヴィクトルさんは、私のかたをがっと掴んだ。
「もう1回」
「え?」
「もう1回!」
「……ヴィーチャ……?」
きゅううーっとヴィクトルさんが苦しそうな顔をする。けれどすぐに恥ずかしそうに笑う。
「どうしたの、調べたの?」
「ぅ、はい……前に、ロシアの名前の愛称ってどうなるのかなって……それで……」
「調べてくれたんだ。呼んでくれるの?」
「……ヴィクトルさんが、嫌でなければ……」
「あ、またヴィクトルさんって言った。嫌なわけないじゃないか。寧ろ胸がぎゅーってなって息が詰まるかと思った!だからもう1回!!」
息が詰まるかと思ったのならばやめておいた方がいいのではと思うが、その顔が心底嬉しそうなので、私もつられて笑顔になる。
「ヴィーチャ、ヤ チェビャー リュブリュー」
だから嬉しくなって調子に乗ると、ヴィクトルさんはくしゃっと笑って私を抱き締めた。
「可愛い発音だね」
「伝わりました?」
「もちろんだよ、Любимая!」
「りゅびーまや?」
「愛しの人、って意味さ!」
ぎゅうぎゅう抱き締められて、苦しいはずなのに嬉しくて、私もぎゅううっと抱き締め返した。
Я тебя люблю ヤ チェビャー リュブリュー
(愛してる)
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