Have a nice!


そりゃあね。
顔良くて博識でたまに毒は吐くけど優しくって、おまけに高身長に黒髪とくればかなりの高物件。女の子だったら一度はくらって来るわよ。ちょっと所かかなり良いとか思うでしょうよ。
しかも独身と来たら願ったりよ。狙ってやるみたいな猛禽系女子?それこそサマンサみたいな百戦錬磨。パーティーの度に見たわよ。てゆーか未だに見るわよ。
ココがどんな体質であれ、女には手を出せないってそこを逆手に取ってる化粧臭い女。
クラルが横に居てもおかまい無しのカッコ悪いオバサン。始めはそれこそ、何あいつ。って眉顰めたけど最近は…勝てるって思ってるのが凄いって、その自信に感心しちゃうのよね。
だって間近でバカップル見せられてればそう思うわよ。

まぁ、エスコートに慣れた私でさえ夢見ちゃう男だものね。なんにも知らなかった頃は私も、あら良い男なんて思ったわよ。でもね、あんたそれホント、


「……いつの話よ」
「…はじめに、前言ってたじゃねーか。ココが良いってよ」


2年前のレセプションじゃない!しかもあの時からココの気持ちクラルに傾いてたじゃない!


「あんたね…ココみたいな事言わないで頂戴。…馬鹿なの?」
「てめ!んだと!」
「ホントの事じゃない!二年前の事持ち出すとか、馬鹿みたいだわ。てゆーかそんな事、一度しか言った事無いわよね」
「ってよ…」
「、何?」


ホントこいつ、馬鹿なのかしら。溜息を素直に吐き出して私はサニーに尋ねた。
あいつはちらりと一瞬だけ視線を私に寄越すとまた、外を眺めて、言いにくそうにがりがり頭掻いて、


「…ってよ。前が、こないだ迄付き合ってた奴だってよ、キザッたらしい優男だったし。ココとは似ても似つかねー面で、ジャガー乗り回してキモサマックスだったけどよ」


ちょっとそれ。遠回しに私の男趣味最悪だって言ってない?キモイって言うけど、顔はそれなりだったわよ。…二人程じゃないけど。


「…あいつの話はしないで頂戴」
「ロクでもねー男に引っかかりやがって」
「うっさい」


てゆーか、てゆーかよ。何でこんな話題になってんのよ。


「前みたいな跳ねっ返りに、あーいうタイプは合わねーし」
「あの時は、あれがカッコいいと思ったのよ!もう終わった事なんだからほっといて頂戴!あいつなんて何とも思ってないんだから!」


何で昔の男の話になってるのよ。まあ、ね。昔って言っても、一ヶ月経ったか経たないか?…経ったかしら?あーもう!覚えて無いわよ。そんな事!


「何ともって…薄情な女。ぼろぼろ泣いてたくせによー」
「な、泣いてない!」
「泣いてたし。わんわん言いながら、あいつ俺に似てっから好きだったっつって、」
「、は?」


まって、今。「、ちょっと、サニー?」「やべ」今こいつ何言った?


「やべ。って今、ちょっと、」
「忘れろ。それが、つくしい」
「美しい訳ないでしょ!聞こえたのよ!?ちょっと、それ…私が言ったの!?何言ったの私!?」


てゆーか何でそんな事、ホントに私が言ったの!?


「忘れてんなら、気にすんなし」
「無理だから!もう今の時点じゃ無理なんだから!!ねぇサニー!!」


顔から火が出そうってきっと、今この時だわ。ちょっと、あの日の私!一体こいつに、何言ったのよ!何言っちゃったの!?

サニーはちらって、私を一瞥して、深く深く、溜息吐いた。吐き出して、確りと私と対面する。私は思わず身構える。だって、これ、本気の時の…腹据えた時のサニーなんだもの。


「…俺、いつとは似てねーし」
「、そうね」


私は裏返りそうになる声を抑えてそれだけ返した。突然過ぎて何を言い出すか分からないから、何も言えない。


「んな…ボンボン趣味の、センスじゃねーし」
「………それは」


たまーに見かけるファッションを思い出して、小首かしげちゃった。なんか…そこだけは賛同出来ないわ。ちょっと考えてたらサニーはむすっとした顔をした。
しょうがないじゃない!あんた、だって、光り物好きでしょ!


「ジャガーなんて興味もねーし」
「そこはそうね」


先ず車に興味皆無よね。


「浮気とかしねーし」
「ちょっと、なんでそんなとこ迄知ってんのよ」
「…良いだろんな事」
「、良いだろって…」


…でも、あいつもそこそこ名前知れてる奴だったし、何処かで耳に入ったのね。まぁ…別に、良いけど。


「つーか女の趣味に、とやかく口出さねーし」
「つくしくないからでしょ」
「俺、寛容だし」
「………」
「黙んな」
「あら、ごめんなさい」
「…惚れた女なら、大切にするし」
「そうなの」


それは分かんなかったわ。寧ろ、あんたの浮いた話なんて聞いた事無かったから想像もつかないわ。
てゆーか今更だけど…こいつフリーよね?勝手にフリーって思い込んでたけど…私以外にも女友達居てっていうか、何気にガールフレンド居る可能性も…。見た事無いけど。


「おう。……つーか、惚れてる女以外と、遊ぶ気ねーし」
「そうなの」


でもそうだわ。こいつ、近くに居過ぎて忘れてたけど…ココ程じゃないにしろモテる男だったわ。レセプションとかで、てゆーか、私にボーイフレンド出来る迄、周りの女の目凄かったじゃない。あー忘れてた。殆ど邪険にって言うか、全く興味ないと無視のレベル決め込む奴だったから考えもしなかったけど…有り得るわよね。
最高に気が合うって言っても…友達だったんだし。居るなら居るで、紹介してくれないとか水臭いけど。
…私が知らないってだけで、いるのかしら。


「、マリア。まえ、聞けし!!」
「、聞いてるわよ!いきなり大声あげないで頂戴!」


聞いてるけど考えてただけよ!ほんとこいつって、何でこんなに目敏い訳!?


「惚れた女じゃないと遊ばないんでしょ!随分硬派じゃない!見かけ軟派っぽいのに!」
「、マジおま、一言余計だな!つーか、聞こえてんなら…気付け!!」
「はぁ!?気付けって、何を…」


惚れた子じゃないと一緒に居ないって事なんでしょ。それがどうしたのよ。軟派っぽいなんて言ったけど、まあ、気位の高いあんたらしいじゃない。惚れた女じゃないと遊ばないなんて……。



直ぐ横で、ぽーんって、間抜けな音がした。

あ。エレベーターが来たのね。なんて、気付いたけど私はそれが、神様が馬鹿な女の為に鳴らした鐘の音だと思った。…だって、本当に間抜けなんだもの。

逆光で少し陰っている、サニーの顔。赤くて、眉間に皺寄っちゃってるのよ。私は、「ちょ、っと…」あいつに聞こえるか聞こえないかって言ったらきっと聞こえないくらい小さな声で。ぽかんって口が開いちゃって、肩の力が抜けた。
真横でエレベーターの扉が開く。職員らしき人が降りてきて、ちらちらこちらを伺っていたみたいだけどサニーが睨むとそそくさって感じで奥に消えていった、気がした。
だって、私横目でしか確認出来なかったもの。居なくなったのだって、サニーが私に視線戻して、溜息吐いたからそうなのかしらって。後ろなんて一々確認していられないわ。だってサニーがゆっくり前髪掻き揚げて、口を開いたの。まるで昨日の続きみたいに。


「前、…俺に聞いたよな」


髪を掻き揚げきって、サニーの体が動く。
一度ガラスに背中預けて、反動付けて、離れて、ポケットに入れていた手もぶらんて降ろして。

シルバーの時計も揺れた。

カツンって固い踵の音立てて、しっかり立って。そうね、仁王立ちみたい。


「どう、思ってるだったか?あん時は邪魔入って言えなかったけどよ、俺は…」


真横でエレベーターが閉じた。でも、私の手はボタンを押さない。胸の前で組んでいた腕は少し解けたら、ぎゅっとまた組み直して、手はクラッチを握ったから。あいつの言葉を待って、顔が、期待で強張るの。

ねぇ、サニー。私、直感に忠実になっても良いかしら。だって、私、あんたと一緒に騒ぐ女も、プライベートのテレフォンナンバー知ってる女も、私はひとりしか知らないの。
たったひとりよ。だから早く。言い淀んでないで、答えを頂戴よ。あんたは、


「…俺は、何とも思ってねー女と、二人で遊び行くとか、迎えいくとかんな器用な事出来る男じゃねーんだよ」



遠くの水平線が太陽の光と遊んでる。水飛沫が上がった気がした。純金鯨が跳ねたのかもしれない。


「、どう、思ってるとか、んなん…。はっきり言わねーと、わかんねーのかよ」


先込む日差しに、サニーの髪がキラキラして、綺麗。


「、分かんないわよ」


綺麗なものって、素敵だわ。


「な、」
「分からないわよ。…そんなの」


そんな素敵なサニーは少し不服そうに頭を掻いたわ。でも、そんな様もカッコ良いだなんて…私も大概ね。でも素敵過ぎて、ちょっと癇に障るの。だから少し意地悪だってしたくなるのよ。


「女の子はね、いつだって言葉が欲しいの」


そうよ。
女の子に産まれた私達はダイヤモンドと一番の友達になれるから、お洒落が大事。月に一度のヘアサロンに二週間に一度のネイルサロン。美食の時代に食を追いかけてお腹一杯で体もパンパンなんてナンセンス。カッコ良くありたいのよ。それは自分の為。だって、私は女の子だもの。


「サニー」


とびきり誇れる自分を、とびきり大切な人に見せて、好きな人には好きって言って、欲しい?いいえ、好きにさせるの。私が誇る、私を認めさせるのよ。

私に、恋しなさい。なんてね。


「言って。…私の事、どう思ってるの?」
「…一度しか、言わねーぞ」


ケチね。でも良いわ。赤ら顔のサニー。あんたのその顔で、許してあげる。口を噤んであげる。


「、俺は」


だってもう、誰にも邪魔されたく無いもの。
心臓の音さえ、今は、煩わしいのよ。




「前の…マリアの事、好きだ」



どんな宝石より美しいブルーの瞳が私を真っ直ぐ見て言った。

夢じゃないのよね。だって私の二つの足は、背伸びをしてもちゃんと地面に付いているもの。握り締めるクラッチの感触も、本物だもの。



「…んか言え、」
「何かって…、そんなの」


だから体に血が通ったらもう、くすぐったい。
嬉しくって、体が熱いなんて…こんな感覚いつぶりかしら。
分かってるわ。分かってるわよ。私も伝えなきゃいけない事があるって。でも、唇を噛み締めたら舌で嘗めて、腕を解いて前髪掻き揚げて…なによこれ、私ってば挙動不審じゃない。
ちょっと心臓、ペースダウンして下さらない?そわそわしそうな体も、ちょっと今は落ち着いて。
私だって、


「そんなの、私だって、…あんたが好きよ」


言いたい事言わなくちゃでしょ。

「好き」


でも言ったら言ったで、あいつまで照れちゃって。あー!もう!


「、だからこれからも…私以外の女と遊ばないで頂戴!」
「、ば。…それは、俺の台詞だっつーの」


サニーが私の居る所に歩いて来る。溜息を吐くくせに、顔はやっぱり赤くって。


「…もう、俺以外の男のとこ、行くんじゃねーし」


それでも男の意地なのかしら?何とか取り澄まそうとカッコ付けてるちゃって。

片腕だけで、私抱き締めるとか…止めてよ、もう。

だから私、背伸びの御陰で近いお綺麗な顔を縁取ってるカラフルな髪にね。指を絡めて、囁いてやるのよ。


「…ならそうならない様に、そのスペシャルな髪で私の事ずっと、繋ぎ止めてなさい」
「は。…かわいくねー」


サニーが笑った。
首筋に吐息を感じた私は今、最高の友達を無くしたんだわって気付いたけどそれ以上に幸せだって、胸を張れたの。だから私もちょっと澄まして笑ったわ。

だって私の今、最高に女の子だから。


「これが私のスタイルなのよ。好きなら全部、愛して頂戴」


これ以上無い位、幸せよ。






…それにしたって、リンに言う事が増えちゃったわね。クラルとココの事に後…

私、貴方のお姉ちゃんになってもいいかしら?

って。ふふ。あの子、どんな顔するかしら!



*Have a nice girls life!*




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