Souvenir



 先ずの利点は手軽さ。薄いビニルのパッケージにも、開封して現れるぴったりとした蓋にも作り方が書いてあるのも良い。ココにとってその文字は母国語ではないが、全く読めない物ではなかった。
 振ると乾いた音をたてる正方形の箱。それは、小松が国への帰省の際に買ってきた土産の品だった。ココに手渡す時、彼は、これは出来上がる迄が驚くほど簡略化されているんですよ! と言っていた。曰く、開封、湯を注いだ3分後に中の湯をシンクに流しきり、付属の粉末を麺に絡める。凡そ3行程。
 使用者の労力を極力省かれたその過程はもてなし文化を持つ国風ゆえか、あるいは開発者達の意地かもしれない。
 その国の郷土料理である和食は、今や世界文化遺産だ。その為か数多の有名料理人を排出しているだけあって、食に関してのこだわりは花の都と同じくらい、うるさいと言う。

「ココさん……」

 水を満たしたケトルを火にかけ、なまえがコンロの前からダイニングテーブルへ振り返る。

「本当に、お昼はそれだけでよろしいの?」

 怪訝さと心配を混ぜ合わせたような顔でココに尋ねる。ココは品を手にしたまま、鷹揚と頷いた。

「面白そうだろ? なんか、実験みたいでさ。あ、そうそう。なまえの分もあるよ」

 そうして「大丈夫。化学調味料はだいぶ使っているようだが、……おかしな成分は、使われていない」少年の様に瞳を輝かせる。そんな恋人の容貌に、そう言う意味では……と、なまえは溜息を漏らしつつも、頬を染めた。



(2016.11.05/執筆)
栄養面が心配な彼女と、栄養面は一先ず置いといて好奇心が勝っているココさん。美食屋だから、好奇心も人一倍なはず。栄養面は追い野菜とか、具材足して調整してる所まで考えたけど一旦ここまで。
トリコ世界にも国があるのをいい事に、毎度の事ながら大好きな言語ネタも混ぜ合わせ、お久しぶりです。
朝日は元気ですよ。
[ prev |next ]
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -