小さな親切大きなお世話、という言葉を知らないのだろうか。この、やまもとたけしという人間は。 「ひとりでいんのもいーけどさ、たまには誰かといるのもいーもんだぜ」 なにを言い出すのかと思えば。そもそも僕はひとりがいいと言ったおぼえもないのに。 手を捕まれる。繋がれる。 山本武の手はいつも、僕の手より少し温かい。 「…僕はそんなこと、ぜんぜん望んでないけど」 君の独りよがりだよって、突き放すのは簡単なことのはず、なのに言えない。拒否できないのは僕の甘さか君の愚かさか、この際どっちでもいい、どちらも、だから。 「分かってるよ。俺が勝手に、こうしたいだけだって」 屈託もなくからっと笑う、その表情とか。 「大きなお世話だよ」 でも好きだ、と聞こえないようにこっそり呟いて、繋がれた手を少しだけ握り返した。 ゆるやかに温まる指先の温度を感じて。 110318 |