ちりちりと燻るような、ぱちぱちと弾けるような、それでいてゆるやかな甘さを孕んでいる。
その感情が、好きだ。



「君はなんでやたらと謝るの」

雲雀が、まっすぐその瞳に俺を捉える。雲雀の瞳はきれいな黒だ。ぜんぜん曇りのない、澄んだ黒。

「そんなに謝るか?」
「うん。すぐ謝る。聞いてるこっちがイライラする」
「はは、そりゃ悪かったな」

あ。謝っちまった。

「ほら」と眉間に皺を寄せる雲雀に、また謝りそうになるのをがまんして誤魔化すように笑ってみせた。


「俺はお前になんもしてやれてないからさ」
「…なにそれ」

好きだっていうのも俺の気持ちの押し付けだし、一緒にいたいってのも、きっと、俺のエゴ。うん、わがままなのなー、俺って。


「ごめんな、ひばり」

あっという間に消えていく小さな泡みたい。俺たちが共有してる一瞬。
本当のことなんていっこも分かんないんだ。お前のこと分かってるつもりで、なんにも分かってない。


「なんでそんな、泣きそうな顔するの」
「…ひばりは、ぜんぜん泣かない」
「悲しくないからね」

でも、分かんないけど、それでいいやって思う。

いつか大人になったらもっと上手に笑えるようになって、もっと上手に誤魔化せるようになるのかもしれないけど。そんなん別にいらない。なんもできないけど、触れたら消えそうなこの曖昧さで、今はいいや。

稚拙なことばで、表現で、伝えたいことがいっぱいあるんだよ。うまく言えなくてごめん。うまく伝えられなくてごめん。



「ねえ、僕はなんにも悲しくないよ。だから君も、笑えば」

ごめん、ありがとう。

俺は恋をしている。




サイダー
110220
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