俺は泣きたくて仕方なかった。弱い自分が嫌で泣きたくなって、そんなことで泣くのは馬鹿馬鹿しいと分かってるのにどうにもできない自分が嫌で泣きたくなって、泣くことしかできない自分に泣きたくなって、負のスパイラル。終わらない。
冬はなんで寒いんだろう。夜はなんで暗いんだろう。俺の気持ちが沈むのはそのせいだ。バカにしやがって。はやく春になれ。朝よ来い。いつか来るんだろ?いつかっていつだ?待ってるだけで訪れるもんなら誰もがいつかは幸せになれるんだろうか。
みんなはたくさん持ってる。地位や名誉や、お金や恋人や才能や、それぞれがありとあらゆるものに恵まれてる。俺にはなにもない。どれもちょっとずつあるようで、大して持ってない。俺はなにをしたくて生きてたんだっけ?忘れちゃったや。
なにを望んでいいかさえ分からなくなったらおしまいな気がしてまた泣きたくなった。俺ってほんとになにもない。
悲観してばかりで高くを望むことができなくなっていったのはいつからだったか。
俺の手はもうなにかを掴もうとすることを忘れてしまった。他人の持つなにかを奪うばかりだ。羨むばかりだ。
「優しいね」「寛大だね」俺より優しいやつなんて世の中にごまんといるし、寛大なやつなんて星の数ほどいるさ。そんなもの、取るに足らないくらいの持ち物だ。
だからほら、結局俺はなにも持ってない無力で意味がない存在なわけだよ。

だけど俺のこんな悩みさえ、本人から言わせてもらえば世の中の終わりみたいに絶望的なもんだけど、世界からすればちっぽけすぎてそのへんのホコリや塵とおんなじくらい取るに足らないもんなんだろうな。悔しい虚しい悲しい。



ノックもなしに部屋に入ってきた男、俺より遥かに優れた容姿と力を持ったそいつは、気づいたらめそめそ泣いていた俺を見て、呆れたように言った。

「君はバカみたいに視野が狭いですねえ」

返す言葉もありません。

まだ涙は止まらない。
そろそろ夜が明けるだろうか。



110205
いつかおはようを夢に見て、今は絶望するばかり。

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -