3つの影がのびる道を木枯らしが通りすぎる。
つられるように、ぶえっくしょい、と隣を歩く神楽がうら若き乙女とは思えない特大のくしゃみをかました。


「おめーそれ、オッサンのくしゃみだな」
「かんたろーのせいネ」
「かんたろーって誰だよ!」
「北風小僧のかんたろーアル」
「友達か!」


そうすばやくつっこんだ新八も直後にくしゃみをして(神楽のものよりよっぽど控えめなくしゃみだった)、「かんたろーめ」と小さく悪態をついた。

風邪引くなよと言ってふと前を見れば、手を繋いだ親子が向こうから歩いてくる。なにか楽しそうに話しながら、笑顔で。

(…なんかへんな気分だな)

同じように並んで歩いている俺らはどう見えているのだろうか。血の繋がりがあるわけでもない、恋人というわけでもない、友達…にもおそらく見えないだろう。


(不思議なもんで。)


たとえばあの日、俺がパフェを食おうと思わなければ、あの店に行くこともなかった。
たとえばあの日、俺が原チャリで一本ちがう通りを走っていたら、ぶつかることもなかった。

そしたら俺は、いまでもひとりだったかもしれない。
テキトーな奴とテキトーな付き合いして、なんとなく笑ったりなんとなく怒ったりして。




「銀ちゃん!」
「ん?ああ、何?」
「なにぼーっとしてたアルか」
「銀さんはいつもぼーっとしてますけどね」
「たしかに!」
「んなこと言うか?」

無邪気に笑う新八と神楽を見て、自然と顔がほころんだ。


いろんな偶然が積み重なって出逢えただなんて、運命論者みたいではずかしいけれど、ほんとにそう思ってる。

まんなかを歩いていた神楽が、右手で俺の左手を、左手で新八の右手を握った。


「おいおいなんの真似だよ」
「たまには手繋いで歩きたいアル」
「なんじゃそら。」
「珍しいね、神楽ちゃん」


3つの影は仲良く繋がった。

なんてやさしいぬくもりなんだろうか、柄にもなく俺はその温度をいとしく思った。





拝啓 あの日

俺たちを引き合わせてくれたことに心から感謝。





11cm

ありがとうございました。
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