「もうすぐだ…」
「なにがよ、ミリア」
「うふふ…時計みて!」
「11時48分…?ああ!誕じょ…」
「しーっ!!」
スリザリン寮のある女子部屋にて、隣のベッドに腰掛けて話しをしている二人の女子。片方が何か言おうとした瞬間、もう片方が人差し指を前に出した。
「なによ!?」
「いっちゃだめ!」
「はぁ?」
「コレは最初に行ってもらう人決まってるからッ!」
「…プッ、そういう事か…でもまだ日付変わってないじゃん」
「あ」
とりあえず、意味があってかなくてか、一番を阻止した彼女はにやにやしながら時計を眺める。よし、そろそろ。と言わんばかりにパジャマの上にローブを羽織り、ベッドからでる。
「じゃあ行ってきまーす☆」
「もう、アンタは…。もしも来なくても男子寮に飛び込むのだけはやめておきなさいよね!」
「あーい!来なかったら明日の朝一発愛の鉄拳を食らわすだけにしとくもーん!」
「……それ、シャレにならないからやめてよ……とりあえず早く帰って来なさいよ…ふぁ、私はもう寝るわ…」
もぞもぞとベッドに潜り込んだ黒髪のショートヘアに、機嫌良さげに返事を返せばミリアはこそりと女子寮から抜け出した。石の階段をペタペタと裸足で静かに降りていく。
こっそりスリザリン寮談話室を覗けば小さくなった暖炉の炎が静かにパチパチとなっている。
「まだ、いない、かぁ」
ポツリとそうつぶやいて仕方なく彼女は暖炉のまえのソファに腰掛けた。
「寒…裸足でくるんじゃなかった…」
時計は日付が変わる2分前。
彼女の角度からは見えない時計に、彼女はため息をつく。足をすりあわせて炎に向かって少しのばす。
その時。
カチッ
時計の針がちょうど重なった。
それと同時に彼女の後ろに人の気配。
「誕生日おめでとう、ミリア」
「…ありがと、ドラコ。」
彼女は振り向かないまま笑顔になって言った。後ろにはドラコと呼ばれた少年の姿。少し立てば彼女がくる、と振り返った。
「来てくれるか不安だった、」
「…一番にって、約束したからな。」
「ありがとうっ」
「う、わっ!やめろって!」
いきなり満面の笑顔を浮かべた彼女は彼に飛びついた。慌てて顔を赤くしたドラコだったが、少し落ち着けば満更でもないのか背中に手を回した。
「ミリア…、お前が生まれてきてくれてよかった」
「嬉しい」
「毎日退屈するとこだった、」
「何よっ、たまには素直になってよ!」
「お互い様だろっ」
甘い雰囲気ではないが、居心地のいい、お互いの温かさ。
笑顔のまま、二人はそっと唇を重ねた。
特別なこの夜に、
(一番欲しい言葉を交わそう、)
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ミリアおめっとー!
執筆魅空