ただひたすらに森を歩く。

どこも一面銀世界で、いつも通っている道もどこか別の道に見えた。

このまま歩いて行けば違う世界に行けるのではないかなどと馬鹿な考えが浮かぶ。

本当に今日の俺はおかしい。

頭を軽く振り、頭の中をリセットしようとするがあまり意味は無かった。

ふと周りを見ると、無意識にあの場所に向かっていることに気がついた。

ドクササコ城の中で唯一桜が咲く場所。

無意識にあいつの好きな桜の木に向かっているなんて、自分にため息しかでなかった。




ここまで来たのだからと自分に言い訳しながらそのまま歩いていると、何か異質なものが視界に入った。



「これは…」



白い雪の上に点々と続く 赤 。

まだ新しいそれは、忍びとして生きる自分には別段珍しいものではないのに何故かひどく気になった。

足跡がなく赤い点だけが続いているということは、木の上を移動しながら落としたものだろう。

この跡はどこかの忍のもので間違いない。

方向から、自分の部下にやられたものではなく、怪我を負い、逃げる途中に迷いこんだようだ。

わざわざ俺が調べなくても、部下にやらせればいい。相手は相当な深手を負っているようだし、あいつらで十分だろう。

そう思っているのに、身体は勝手に動き出していた。









赤色は俺が向かっていた桜の木へ続いている。





嗚呼…止まれ…行くんじゃねえ……





俺の気持ちを嘲笑うように


辿り着いた先には


服を雪の上の赤と同じ色に染めた










  あ  い  つ  が  い  た













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