お互いに動揺したがなんとか気持ちを切り替え席に通す。

注文はアイスコーヒーとなんとも見た目通りのものだった。

ギクシャクした雰囲気を脱したくて注文を取ってそそくさと去る。






アイスコーヒーを持って行くと何やら書類のようなものを取りだして電話をしているところだった。

仕事の合間に寄ったにしては遅い時間だったが忙しそうにしているところを見ると帰宅途中ではなさそうだ。

会社員は大変だなと思いながら注文の品を置こうとするが机に書類が広がっていて置く場所が無い。

どうしたものかと思案していると電話を終えたらしく目があった。


「お待たせしました。アイスコーヒーです。」

「散らかして悪いな。」

「いえ…お仕事忙しそうですね。」

「まあな…。お前も仕事お疲れさん。」

「あ、はい。」


書類を退けてくれた場所にアイスコーヒーを置きながらつい声をかけてしまう。

よく見ると前に会った時より疲れたような顔をしていた。


「あの…」

「ん?」


アイスコーヒーを飲もうとした手を止めてこちらを見る瞳に思わず口を噤む。

俺は何を言おうとしてるんだろう。

本当はずっと捜していた人に会えたかを聞こうと思った。

でも何故かそれを聞いてはいけないような気がして何も言えない。

そんな俺の様子を組み取ってくれたのか向こうから口を開いてくれた。


「………前に勘違いしたときは悪かったな。」

「いえ…。」

「前に捜していた奴なんだがな…一応会えたぞ。」

「え!?会えたんですか!?」


正直意外だった。

渇望していた相手に会えたにしては憔悴しているように見えたから。


「良かったですね!」

「…ああ。」


やっぱり嬉しそうには見えない。

むしろ辛そうに見えるのは俺の気のせいだろうか。


「引きとめて悪かったな。迷惑かけた分これだけは知らせときたくてな。」

「………あの」

「おい!錫高野!」


口を開いた瞬間先輩から呼び出しがかかった。

さすがに話過ぎたようだ。


「…ゆっくりしていってください。」

「ああ。何か言われたら俺が引き留めたと言っといてくれ。」


申し訳なさそうにする様子に気にしないでくれと告げその場を離れる。

こっそり振り返ると険しい顔をしながらアイスコーヒーを飲む姿が見えた。




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