はぁ…と吐き出される息は白く、冬の訪れを告げていた。

俺は冬が嫌いだ。寒いし何より雪が降る。

八つ当たりだとは分かっていても、あの雪の日がフラッシュバックされてしまいどうも好きになれなかった。


「もうすぐ雪が降りそうっすねー!」


そうやって呑気な声を上げているのは部下の白目だ。


「そうだな…」

「雪降ったらすぐクリスマスが来てお正月が来てってなるんですよね!」

「随分嬉しそうじゃねえか」

「モチロンっスよ!先輩は楽しみじゃないんですか?」

「んなもんにはしゃぐのはガキかお前くらいだ」

「ひでぇ…先輩だって今の彼女さんと初めてのイベントじゃないっすか!」

「…………………」

「あれ?もしかして、また別れたんですか?」

「…関係ねえだろ」

「ええええ!?マジっすかあああ!?」

「うっせーよこのバカ!」

「いてえええ!」


こいつはいつも一言多い。

余計なことをいうから殴られるのに今まで学習した様子は見られなかった。

まったく…前世からこれっぽっちも成長していやしない。

生まれ変わってもこいつの上司なんて、こういうのを腐れ縁というんだろうな。


「先輩の彼女さんって秘書課でも美人って有名な子ですよね!?あんな美人な人振るなんてなに考えてるんですか!?」

「うるせぇって言ってんだろうが。しかも俺から振ったわけじゃねぇよ。」

「え?また振られたんですか?」

「………」

「いってえええええ!!」


殴り過ぎるからこいつは馬鹿なままなんだろうか…。


「図星だったからって殴らないでくださいよぅ」

「もう一発欲しいのか?」

「いらないです!でも本当に勿体無いなぁ…」

「向こうから別れを切り出してきたんだから仕方ないだろ。」

「先輩って女の子からモテるのに続かないですよねー。もっと大事にしなくちゃ駄目っすよ!」

「余計な御世話だ。」

「俺だったら幸せにするのになぁ。」


こいつは女にモテないと思っているが、年上からは中々人気がある。しかし本人の好みが年下の可愛い系だから女に恵まれない。

逆に俺はこいつの好みのタイプから好かれることが多いようだ。

過去にはそれなりの付き合いをしてきたが長続きしたことはない。

理由は『貴方はわたしを見てくれない』ということらしい。

好きじゃない奴と付き合う気は無いので見ていないわけではないのだが、心の奥底では常にあいつを捜してしまっている所為で言い訳もできない。

結果、相手を怒らせてそのままになってしまうのがパターンだった。

わかっている。このままあいつを捜し続けても意味のないことかもしれないと。

しかし止めることは出来なかった。

生まれ変わっても消えることのなかったこの想いが、それを許してくれなかった。

この不毛な行為はいつまで続くのか。そろそろ俺の精神も疲れてきていた。






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