与四郎は耳が弱いと知ったのは些細な出来心からだった。
俺がいるのに宿題に手を付ける与四郎が気に食わなくて、定番の悪戯を仕掛けようとこっそり後ろに回り込み、宿題に意識が向いている与四郎の耳元で声をかけた。
「なあ、」
「んぁっ…」
予想外に可愛い声が聞けたことに気を良くした俺は、あいつの耳を集中的に攻めてみた。
「お前耳弱ぇの?」
「んっ、耳元でしゃべんなっ」
「じゃあこれは?」
「あぁっ…!か、噛むとかありえねえべ!」
顔を真っ赤にして抗議してくる与四郎が凶悪に可愛くて、その、キタ。
必死に耳を抑えている与四郎に顔を近づけ、抑えてる手の上からわざと低くした声で話しかける。
「与四郎、手、どけろよ。」
「…っ」
声が手の中で反響して悪循環。
元々こいつは俺の声が苦手…というより好きらしい。
一気に身体の力が抜けたのが見て取れた。
俺はそのまま口で指を食み、耳からゆっくりと外した。
与四郎が耳への刺激に耐えようとぎゅっと目を瞑る。
こいつは…どこまで可愛いんだ…
なんて阿呆なことを考えながら咥えたままだった指に舌を這わす。
「あ…」
てっきり耳への刺激が来ると思っていた与四郎は無意識に残念そうな声を漏らした。
あいつが素直じゃないのは百も承知だし、どこに何が欲しいのかなんてわかりきっているが、それを言わせたいのが男心ってもんだろう。
「どうした?」
「べ、別に何でもねー…」
「ふーん」
恨みがましそうな視線を無視して指をしゃぶる。
人差し指から順番に舐め、関節を噛み、先を吸い上げた。
与四郎に視線をやると俺の様子をじっと見ていたのか目が合った。
ただでさえ上気していた頬が更に熟れる。
ああ…美味そうだ…
欲望のまま頬にかじりつく。
「いっ!な、何すんだーヨ!」
「美味そうだからつい…」
「ついってなんだべ!」
どうやらお気に召さなかったらしい。
未だ騒ぎ立てている与四郎は顔が真っ赤でやっぱり可愛い。
思わずため息が漏れる。
こんな可愛くて大丈夫なのかこいつ…。
「聞いてんのか!凄さん!!」
「聞いてるよ。」
キャンキャン子犬のように騒ぐこいつも耳を食んだだけで色っぽくなるんだから性質が悪い。
言わせようと思ったが自分の我慢の方が限界だったようだ。
全部こいつが可愛過ぎるのが悪いということにして、先ほどから散々焦らした耳に舌を這わせた。
「んぅ!」
油断していたのか、先ほどよりも大きく身体を仰け反らせる。
ピチャピチャと音を立てて舐めると身体をビクつかせながら声を抑えようとするのが見て取れた。
その様子にムッとした俺は深くまで舌をねじ込む。
「やぁっ!」
声が出た瞬間に両耳を攻め立てると断続的に声が漏れて少し満足した。
だってそうだろう?折角可愛く啼く声を我慢するなんて勿体無い。
普段我慢してる分、乱れた与四郎を見たいと思うのは自然の摂理だと思う。
「あっ、やっ、凄さ…も、だめっ」
しつこく耳を攻めていると与四郎の身体から力が抜け始めた。
本当に耳が弱いんだと再確認する。
今まで耳は意識したことが無かったが、これからは色々使えそうだ。
与四郎が耳に意識が行っている隙にシャツを捲り上げ脇腹を撫でる。
「んぅ!!」
耳にばかり意識が行っていた所為で服が捲られていたことにも気付いていなかったようだ。
同時に二カ所を攻められて小刻みに震えている。
脇腹を撫でていた手を胸まで滑らせるとより一層身体をビクつかせた。
「や!そこ、やめっ」
「ここと、ここ、どっちの方が嫌だ?」
言いながら耳を吸い上げ、胸の突起に爪を立てた。
「ひぁっあっあっ」
「片方なら止めてやるぞ。」
聞いている間も手と舌は動き続けている。
与四郎の口からは絶えず喘ぎ声が漏れ、更に俺を煽った。
「あっ、みっ…み、やぁっ」
「ん?」
「み、み…やめっ」
耳の方が嫌だとは予想外だ。
そんなに弱いところを今まで知らなかったことが不思議だが、耳なんて完全に盲点だったからな…。
約束なので耳から顔を離す。
指はまだ胸のあたりで動いていたが、先ほどよりは我慢できるのか、声を上げることは無い。
…つまらん。
普段の情事中の与四郎なんだが、先ほどの乱れ様を知っているだけに物足りなさを感じる。
「ひぁ!!」
片方の手をズボンの中に入れ、一気に掴みあげるとようやく望んだ声が聞けた。
「やっ…とつぜ、まっ…ひっ、んっ…んぅ!」
「声が聞きてぇんだよ…そのまま出してろ。」
「お…らばっか…んっ…ずる…ああっ」
普段天邪鬼な与四郎が喘ぐ様は異様に煽られる。
早く入れてしまいたい気持ちを抑えつつ、後ろに指を滑らせた。
「っ!!」
何をされるか理解している身体はいち早く反応して固くなったが、肝心の部分は緩々と周りを摩ると何かを期待するようにひくつくのがわかった。
「ちょっと冷たいけど我慢しろよ。」
「ひゃあ!!」
素早くベッドサイドからローションを取り出して塗りたくる。
いつもは体温で少し温くしてやるんだが、今日は如何せん煽られて余裕がなかった。
やはり冷たかったらしく与四郎の身体が跳ねる。
「んっ…しゃ…こ、いっ…」
「悪い…いつもより乱暴になるかもしれん…」
「ぁ、んっ、す、凄さ、んの…好きに…」
「…ちっ」
これでも多少のセーブをしていたと言うのに、与四郎が完膚なきまでに理性を引きちぎってしまった。
そこからはただ与四郎を求めるだけで、ローションを惜しげもなく垂らし、冷たさに竦む与四郎を口付けで押さえつけて指を入れた。
「んぅ!んっ、ふっ…」
「はっ…」
ローションのおかげかすんなり指が入り、一気に二本入れても痛がることは無かった。
唇を離すと理性が飛んできたのか、声を抑えることはしなくなった。
「あっ…あふ…んん!!」
指を動かすと聞こえる水音と喘ぎ声が俺の聴覚を刺激する。
もっと啼かせたいという欲望が次から次へと沸いてきて、いつの間にか指は三本に増え、激しく抜き差しを繰り返していた。
「ひゃあ!ん!すご、さ…ああっ!!」
「…与四郎」
「んぅ!!あっ、も、らめっ!らめぇ!!」
パサパサと頭を振りながら快感を耐えようとする与四郎の目には涙が溜まっている。
首を振る度にそれが零れるのが堪らない。
「す、ご…あっ、凄さ…ひぁっ」
「もう我慢出来ないのか?」
「ひっ…イクっ!イっちゃ、からっ、も、やぁ!!」
「このまま一回イっとくか?」
言いながら指の速度を速めると一際身体を跳ねさせる。
「やっ、んぅ!まっ、て、んっんっ」
「あ?」
「ゆび、やっ…あっ、凄さ、んがいい!」
「…ちっ」
落ち着くためにも一度楽にしてやろうと思ったのに、今の一言で全てがどうでもよくなった。
「散々煽りやがって…後悔すんなよ!」
「は、やくっすごさ…はやくぅ!!」
「だから煽んなって言ってんだろうが!」
「んあああっっ!!」
ゆっくり入れてやるなんて配慮も出来ず、欲望のままに一気に貫いた。
後はもう、覚えたての餓鬼のようにただ与四郎を貪った。
「あっ!あっ!ふぅっ、ん!んぁ!」
「…はっ、まだ、イくんじゃねぇぞっ」
「やっ、そこやらぁっ!んっ、んぅ!ひぅ!」
「嫌じゃなくて良いんだろうがっ!」
「あひぃっ!!ぐ、ぐりぐりやっ!んんっ!」
突き上げ掻き回し激しい抜き差しを繰り返した。
散々好き勝手揺さぶられた与四郎は意識が半分飛んでおり、されるがままに揺さぶられている。
中の痙攣し始めて、俺もあいつも限界が近かった。
「も、イっちゃっ…ああっ!」
俺はしがみ付いてくる与四郎の奥を深く突き上げ、耳に噛み付いた。
「くっ…イけ、与四郎っ」
「んっっやぁああーーーーっ」
「っ!!」
一際大きい声で啼いたあと、身体を痙攣させながら与四郎が果て、中の収縮に促されるように俺も与四郎の中で果てた。
「…すまん。」
「…で?」
「…誠に申し訳ありませんでした」
「…信じらんねぇべ。人が勉強してるの邪魔した上にあんな…」
「でも気持ちよかっ…」
「それ以上せーったらぼこす。」
「…ハイ」
現在、俺は与四郎に説教を食らっている。
あんだけ好き勝手やったんだから致し方ないんだが…。
「だいたい凄さんは…」
こんなやり取りが30分以上続いてるが、まだ与四郎の気は晴れないようだ。
自分の弱点が知られたことが恥ずかしいらしい。
お説教は辛いが、俺としてはそれ以上の収穫があったから良しとするか。
「凄さん、聞いてるのけ!?」
「ああ、聞いてるよ。」
「ひぅっ!」
言いながら与四郎の耳を舐めるとやはりビクンッと身体を跳ねさせた。
ほんと、良いことを知ったもんだ。
そんなことをしみじみと思っていたら与四郎が俯いて震えているのがわかった。
「与四郎?どうし…」
「凄さんの…馬鹿たれえええええ!!!!!!」
「うぐっ!?」
与四郎の盛大なパンチが鳩尾にクリーンヒットし一瞬息が止まる。
その隙に与四郎はさっさと鞄をもって出て行ってしまった。
「…しまった…やりすぎた…」
後悔先に立たず。部屋に取り残された俺は頭を抱えながら与四郎への言い訳を考えていた。
このあと与四郎を宥めるのに多大な時間を要したのは言うまでもない。
何事もやり過ぎにはご用心
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