仕事が立て込んで三日目。
与四郎が遊びに来ても構うことが出来ず、俺は持ち帰った仕事に取り組んでいた。
それも今日で終わりそうなのだが、流石に三日も放っておいて怒っているんじゃないだろうか、と心配になる。
忙しくなる前にきちんと仕事が立て込む旨は伝えておいたし、構えないから来なくていいとも言った。
だが、与四郎は律義に毎日来て、俺の邪魔をしないように俺の後ろで静かに宿題をしたりしていた。
大抵は俺が仕事を終わるころには眠ってしまっているんだが。
今日こそはと思い仕事に没頭すること数時間、漸く目途がついたことには日付も変わろうとしていた。
後ろに居る筈の与四郎を振り返ると案の定眠っていて、申し訳なさ半分愛しさ半分でなんとも言えない気持ちになった。
普段は減らず口ばかりな与四郎だが、こういうところを見せられるとその減らず口も可愛く思えてくる。
実際、与四郎は照れ屋なだけで口では天邪鬼なことばかり言うが行動は本当に可愛いのだ。
こうやって俺が本当に忙しい時は邪魔しないようにしながらも傍から離れないのだから。
与四郎がこんなに可愛いのを知っているのは俺だけだと思うと知らず口が上がってしまう。
白目辺りが見たら驚くぐらいは今の俺はだらしない顔をしてるだろう。
幸せなのだからこれくらいは大目に見てくれ、と居もしない誰かに言い訳しつつ、俺は与四郎をベッドに連れて行こうと立ち上がった。
「こんなところで寝てると風邪ひくぞー?」
一応声は掛けるが今までこれで起きたことは一度もない。
与四郎は一度寝るとなかなか起きない体質のようだ。
「しゃあねえなぁ」
減らず口ばかりなのは俺も一緒のようで、与四郎が万が一起きても平気なように仕方なくを装う。
眠っている与四郎を起こさないようにゆっくり抱き上げる。
そのままベッドに運び降ろすと与四郎の顔が思った以上に近くて動揺した。
「うっ…」
思わず後ずさりそうになったが、何かに引っ張られて後ろに下がれない。
よく見ると与四郎の手が俺の上着を握っていた。
こいつ…なに可愛いことやってんだ…!
ただでさえ今は少しヤバい…いや、ヤバくない。ヤバいってなんだ。
ヤバいと思うからヤバいのであって俺は決してヤバくない。
そう、例えば与四郎の寝顔が可愛くてキスしそうになったとか、そんなことは決してない。
仕事のし過ぎで自制が利かなくなっているのか、いつもより理性が弱く感じる。
与四郎の唇から目が離せない。
僅かに開いた唇に舌をねじ込んでしまいたい欲望を必死で抑えて与四郎の手を外そうと試みる。
「んぅ…」
「!?」
与四郎が身じろぎをして距離が余計近くなった。
こいつは…こっちは必死に我慢してるっていうのに…
警戒心の欠片もなく寝ている与四郎を眺めていると優しくしてやりたいと思うのに、俺の身体は与四郎を求めていた。
なんだか今日の与四郎は何かが違う…いや、今日だけじゃない。最近与四郎を見ていると変な気分になる。
有り体に言えば、欲情する。
盛りの付いた餓鬼でもあるまいし自制しようと納めていたのだが、それも限界が近いようだ。
加えて連日の超過した仕事。
少しは褒美をもらっても罰は当たらないんじゃないだろうかなんて自分勝手な考えが浮かぶ。
「………すまん、与四郎」
聞こえるはずのない謝罪を呟きそっと与四郎に口づけた。
いや、これ以上は進まない。口を合わせるだけだ。与四郎が足りなかったから補給しているだけで、これ以上は…
意識とは裏腹にゆっくりと俺の舌が与四郎の唇をなぞって隙間に入って行く。
手もいつの間にか与四郎の上着を捲っていて、腹やら胸やらを弄っていた。
「んっ…!」
胸の突起に指が触れた時、与四郎の身体が一際大きく揺れた。
この反応は…
「起きてるのか…?」
「………起こされたんだーヨ。」
てっきり眠っていると思っていた与四郎が不機嫌そうに呟いた。
声が擦れてないところを見ても今起きたわけではなさそうだ。
起きた途端大目玉を喰らう事を覚悟していただけに少し拍子抜けしてしまう。
「…怒らないのか?」
「………怒って欲しいのけ?」
「いや、そういうわけでは…」
「ならいいじゃんかよ。」
いつもの与四郎ならこんなことをすれば鉄拳が飛んでくること間違いなしなのにこの寛大さはなんだ?
俺が忙しそうにしていたから気遣ってるんだろうか。それとも待っていたのか?
与四郎の胸に置いたままになっていた手を動かしてみる。
「あっ…ふぅ…」
身を捩りはするが拒否されることは無かった。
これは…誘われてると思って、いいんだよな。
緩やかに撫でるだけだった手を明確な意思を持って動かす。
突起を集中的に弄ると一段と反応を示す与四郎はいつも以上に感じているようだった。
「お前どうしたんだ?いつもより感度高くないか?」
「うっせ…!そういう、ことは、んっ、言わないのがルールだべ…!」
「普段ならそうなんだが、いつもと違い過ぎてな…気になるだろ。」
「やっ!!ちょ、凄さ、急すぎ…あぁっ!!」
油断している与四郎自身を握りながら与四郎に問いかける。
「なぁ、いつから起きてたんだ?」
「しら、ねっ!」
「いつだって良いんだけどよ。これはお誘いってとって良いんだよな?」
「だから、しらねぇって…!」
身体は素直に反応してるくせに口は未だに素直じゃない与四郎にいつもと違うスイッチが入る音がした。
ペロッと乾いた唇を舐め、与四郎に自分でもわかるくらい情欲に染まった視線を向ける。
「っ!!」
視線の意図に気付いたのか、与四郎が顔を赤らめながら喉をならした。
それだけでこいつも興奮してるのがわかる。
もしかしたら最初からこのつもりだったのか、なんて本人に言ったら殴られかねないことを考えながら与四郎の上に跨った。
そのまま性急にズボンと下着を取り払う。
「す、凄さん!」
「今日はいつもみたいに出来ないからな。」
慌てる与四郎にそれだけを言い、口元に指を持っていく。
「舐めろ。」
「………ん…はっ、んぅ…」
与四郎はしばし戸惑ったものの、異論も言わず素直に指を舐めていく。
その従順な姿に更に煽られる。
このままだと加減が効かないと危険信号が鳴っていたが、この熱に抗う理性など今の俺には持ち合わせていなかった。
「もういいぞ。」
「んはっ」
指を引き抜くと物足りなそうな与四郎の視線に気付く。
「これより良いもんやるからそんな顔すんなよ。」
「良い、もの…?」
与四郎の理性はすでに崩れかけているのか、素直に俺を見上げてくる。
そんな与四郎にいつもはさせない要求をしてみたくなった。
「こっちの方がいいだろ…?」
そう言って自身を与四郎の目の前に持っていく。
「ぁ……でっけぇ…」
「ばーか。無理にとは言わな…っ!!」
「んっ…ふぅ…」
言い終わる前に与四郎が俺のモノを咥えてきた。
何があったかは知らんが、こいつも相当興奮しているようだ。
「んく…はっ、あむ…」
一心不乱にしゃぶる与四郎にいつもの気丈さはない。
征服欲が満たされた気がして、自然口角が上がる。
「美味そうにしゃぶりやがって…」
「おいひいわけ、んっ、ない…ッ」
「ッ…!!馬鹿!咥えながら喋るな!」
歯が当たって思わずイキそうになる。
この状態で先にイくなどプライドが許さず、なんとか堪えた。
口から引き抜くと与四郎が不満そうな顔をしたが無視して押し倒す。
「冷てぇだろうが、我慢しろよ。」
体温で温めてやるのも今は惜しい。
急かされるように大量のジェルを後ろに刷り込む。
「んぁ!!しゃっこ…んぅッ!!」
「悪いな…」
ジェルの力を使いグチャグチャに掻き混ぜながら慣らしていく。
そのまま指を引き抜くのと同時に一気に貫いた。
「あああああッ!!!!!」
「…くっ……」
入れた瞬間強い締め付けに合い必死に堪える。
与四郎はビクビクと身体を小刻みに痙攣させていた。
「…お前、イったの、か?」
「あ…あッ…」
聞いても答えることは出来なさそうだ。
暫く待ってやりたかったが、そんな余裕など既に俺の中から無くなっていた。
「あッ!?ひぁ!!凄、さ…!んんッッ!!ま、て…待って!」
「…無理だっ」
「あひっ!ふッ、ふぅ…ッ、んぁ!!」
与四郎の身体をただただ貪り、気の済むまで蹂躙した。
理性なんてものは既に存在せず、目の前の身体を喰らい尽くすことしか考えることが出来なかった。
「あッ!あッ!も、駄目ッッ!!イ、く…ッ!」
「…くッ!……ッッ」
「んああああッッ!!!ひっ…ひぅ…」
「ふっ…はぁ…はぁ…」
与四郎の二度目の絶頂と同時に俺自身も果てた。
普段より遥かに強い快楽に暫く言葉を発することが出来なかった。
いつも抑えていた欲望が剥き出しになり、想いのままに犯すことが俺に想像以上の快楽をもたらしたようだ。
「はっ…与四郎…」
「な、に…」
「すま…」
「あやま、たら…怒、るかんな…」
無理をさせたことに対して謝ろうとしたが、与四郎に釘を刺されてしまいなにも言えなくなってしまう。
「お、らが…はぁ…誘った、から…凄さ、は…気にすんでね…」
「でもな…」
「さいき、ん、凄さん…が、忙しくて…さみしかったんだ…ヨ」
「与四郎…」
「それに………」
そこまで言うと暫し迷うような仕草を見せたが、再び口を開いた。
「たまには…あれくらいしても…良いだーヨ…」
「与四郎!?」
思わぬ発言に驚いていると、与四郎はそっぽを向いて布団をかぶってしまった。
理性が徐々に戻ってきたのだろう。後戻り出来ずに言ってしまったことが恥ずかしくて仕方ないようだ。
俺はと言うと、正直さっきの与四郎のセリフが衝撃的過ぎて、未だに意味を理解しきれていなかった。
ここ暫くの仕事漬けは俺だけじゃなく与四郎も堪えたらしい。
仕事に感謝するわけではないが、頑張った甲斐はあったようだ。
いつの間にか規則的に動いている布団をめくり、寝入ってしまった与四郎を眺める。
仕事疲れと肉体疲労で俺もすぐ寝てしまうだろうが、それまではこの寝顔を堪能しようと決め、重い瞼を必死に堪えた。
出来れば、夢の中でも与四郎に会えることを祈って。
頑張った人にはご褒美を
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