第7話

船に乗り込むと、そこにはキラーが船縁に腰を掛け待っていた。
フッと二人に気が付くと、立ち上がり近付く。

「キッド見つかったのか。」

「あぁ、猫付でな。」

チラリッとフィールの腕の中に居るナハトを見た。
その視線に釣られキラーも視線を向けた。

「許可したのか…フィールに甘いな。」

「うるせェよ。」

と言うとキッドは、話を早々に切り上げ歩き出した。
腕の中で未だ微睡んでいるフィールを部屋に運ぶ。
船の一番奥にある元物置だった場所を部屋として使っていた。
ギーッと音を立て、ドアが開く。
窓の無い室内は暗く開いたドアから、差し込む灯りで辛うじて見える程度だった。
見えた部屋の中は、一瞬入るのを躊躇する程の光景が広がる。
壁一面に様々な魔除けの飾りなどが、所狭しと飾られ少し禍々しかった。
キッドは慣れているのか、躊躇無く部屋の中に入るとフィールをベッドに寝かす。
フィールは、運ばれている最中に完全に寝入っていた。
キッドは寝入っているフィールの頭を優しく撫で部屋を後にした。
キッドが出ていた部屋はフィールの寝息だけが静かに聞こえ、床に降ろされていたハナトは落ち着かずウロウロと歩き回っていた。
けれど暫くすると規則正しかった、フィールの寝息が乱れ出した。
悪夢を見ているのか時折辛そうに顔が歪み、呻き声を上げ無意識に掛け布団を握りしめていた。
そして…

「ご…めんな…さい。」

と苦しそうに寝言を言うと、ツゥーッと一筋の涙が頬を伝う。
先ほどまで部屋中を歩き回っていたナハトは、フィールの様子の変化に気が付いたのかタンッとベッドの上に乗り上がった。
そして、おもむろに布団の中に入るとフィールに擦り寄った。
ナハトは、そのまま身体を丸めフィールに寄り添う様に眠りについた。
自分以外の温もりが在るのに安心したのか、先程までうなされていたフィールは徐々に落ち着きを取り戻した。
ぐっすりと寝入るフィールの顔は、幸せな夢でも見ているのか穏やかな笑みを浮かべていた。
時間は刻々と過ぎて行き夕方だった空は、次第に暗くなり賑やかだった船内も皆が寝入りひっそりと静まり返っていた。
そして皆が寝入って数時間後、暗かった空は徐々に明るくなっていた。
空が明るくなり完全に太陽が顔を出す頃、静かだった船内はまた賑やかさを取り戻す。
よりいっそう賑やかな食堂には、キッドとキラーの姿もあった。
二人の目の前には、今日の朝食が置いてありキッドはパンを手に取るとモシャモシャと咀嚼をし飲み込む。
朝でまだ眠いのかキッドは、ボーッとしていたがある事に気がつきキラーに喋りかける。

「なぁ、キラー。」

「…何だ。」

「今日、フィールの姿見たか?」

「今日は、まだ見ていなが…珍しい事もあるもんだな。」

「昨日晩から何も食って無いはずだ…ったく、フィールの奴なにやってんだ。」

普段から眠りが浅く不眠症のフィールは、人一倍早くに起きて居るはずか今朝に限ってはまだ一度も姿を現して居なかった。
キッドは、早々に朝食を切り上げると『様子、見てくる。』とキラーに告げ足早に食堂を後にする。
ズンズンッと大股で歩き、フィールの部屋へと向かった。
目的の部屋に着き『入るぞ。』と声を掛けると同時にドアを開け中に入った。
中に入るとフィールは、今だベッドの中に居るようで小さく布団が盛り上がっていた。

「おい、フィール…ッ!?」

とキッドが喋り掛けながら近付いたが、穏やかな笑みを浮かべ眠るフィールの姿を見て目を大きく見開いた。

「寝てんのか。」

ベッドサイドにそっと腰掛け、再度確認する為にもう一度フィールの顔を覗き込む。
そのまま暫くの間寝顔を見ていたキッドだったが、静かにゆっくりと立ち上がると部屋を後にした。
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