第5話

薄暗い路地でお互い向き合ったまま、一向に喋らず静寂が辺りを支配した。
その静寂を破ったのはローだった。

「お前、何を抱いてる。」

ゴソゴソと動くケープを凝視しなががら言った。

「トラファルガー…貴方、医者ですよね。
この子の怪我見てくれません。」

と言いながら、ズイッと腕に抱いていた黒猫をローに近づけた。
近づけられた本人は、少し顔を歪めた。

「診てくれないんですか。」

じっとりとした、目付きでローを見据えた。

「はぁ…ソイツ貸せ。」

と言うとフィールの手から黒猫をとり手早く傷の手当てをした。
手当てが終わると、黒猫はフィールの足に摺り寄る。
それを見たフィールは、笑みを浮かべながらまた黒猫を抱き上げた。
その様子を見たローは、怪訝顔をしてフィールを見た。

「何です?」


その視線に気付くと、目線だけをローに向け短く言い放った。

「黒猫は、避けないのか。
よく言うだろ、黒猫が前を横切ったら遠回りしてでも別の道通れと。」

「あぁ…ソレですか。
私の島では、黒猫は魔物から守り財産を運ぶと言われてるので。」

『だから、平気です。』と微笑みながら、優しく黒猫を撫でた。
黒猫も撫でられるのが気持ち良さそうに、目を細めた。

「首輪が無いって事は、ノラ…か。」

と誰に言うでもなく、呟く。

「名前どうしようかな。」

「その猫、船に乗せるつもりか。」

「当たり前、でなければ始めから追いかません。」

そう言うとギュッと大切そうに、抱え『うーん』と小さく唸った。

「決めた、名前はナハト。」

「ナハト…夜か。」

「漆黒の毛並みに金色の瞳が月みたいだから。」

そう言い、フワリッと笑みを浮かべた。

「さてと、そろそろ船に…あっ…トラファルガー、船の場所知らないですよね。」

「船を探す必要は、無くなったみたいだ。」

ニヤニヤッと口の口角を上げながらフィールにそう告げた。

「えっ?」

と言った瞬間…

「フィール、テメェやっと見つけたぞ。」

真後ろからキッドの怒声が響いた。
その怒声を聞いて慌てて、フィールは後ろを振り向いた。


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