第4話
薄暗い路地裏にコツコツとヒールの音が虚しく響いていた。
船が停泊している場所に戻ろうとあるくフィールだったが、停泊している場所とは反対方向に歩いていた。
「駄目だ…戻れない。」
腕の中では黒猫が不安そうな目で、フィールを見ていた。
ウロウロと歩いていると、狭い路地裏を抜け出し少し開けた場所に出ることが出来フィールは、辺りを見回した。
そこは、始め買い物をしていた場所とは全然違う景色をしていた。
敷かれていた石畳は壊され土が露出し。
壊れかけている建物に、ボロ布を纏った子どもや下卑た笑みを浮かべた男達がいた。
品定めすような視線がフィールに注がれた。
その視線に気づくと『チッ』と短く舌打ちをし辺りを見た。
足早にこの場所から、遠のこうと足を動かした瞬間…
周囲を数人の男達に取り囲まれた。
自分より幾分か背の高い男を見、不機嫌そうに顔をしかめた。
一人の男が、グッとフィール顎を掴み無理矢理上を向かせた。
「おい、見てみろすげぇ上玉だぜ。
まぁ…少し胸が足りねぇがな。」
と男が言うと周りから、下卑た笑いが起こった。
それを聞いたフィールの額には、青筋が浮かび上がっていた。
「で、何か用。」
両手で抱えていた黒猫を、片手で抱え空いた手で顎を掴んでいる男の手を叩き落とした。
「用って…なぁ、俺達と良いことシようぜ。」
と言うと男は、フィールの肩を抱いた。
「いや、結構。」
言うやいなや、肩を抱いた男の鳩尾を肘で思いっきり殴った。
「ぐっ…」
呻き声をあげ前屈みになった男の髪をおもむろに掴み、顔面を思いっきり膝で蹴った。
「このアマ、何しやがる。」
「邪魔だから。」
パッと掴んでいた、男の髪を放しながら言った。
放された男は、顔面を押さえ地面に膝をついた。
「おい、コイツ少し痛い目にあわせてやれ。」
と頭らしき男が言うと、一斉に男達がフィールに向かい拳を振り上げた。
軽々と攻撃を避け、空いている手で何かを探していた。
しかし探しモノは、一向に見つかる気配が無かった。
「……あれ?
鞄がない…船に忘れてきた……って事は、能力使えない。」
そう、呟いた。
フィールの能力は、自分の心を具現化した本を通じ様々なモノを具現化する事が出来が具現化するモノの強さにより精神的疲労が加算される。
「まぁ、これくらいなら能力使わなくても倒せるか。」
と余裕の笑みを浮かべながら、次々に攻撃をくりだした。
そして数分後フィールの周りを取り囲んでいた男達は、全員地面に倒れ伏していた。
「狂った鬼子の通り名は、伊達じゃねェようだな。」
「トラファルガー、覗き見とは良いご趣味ですね。」
と物影から、姿を現したローを見ながら満面の笑みでそう言った。