第3話

「雪、綺麗…白くて。」

キラキラとフィールは、目を輝かせていた。

「フィール、はしゃぐと危険だ。」

「大丈夫、キラーは心配しすッ…」

と言った瞬間、路面が凍っておりツルッと足を滑らしてしまった。
来るであろう衝撃に備えフィールは、ギュッと目を瞑った。
しかしその衝撃は、いつまでたっても来なかった。
目を開くと見覚えのある腕が腰に回っていた。

「だから言っただろう。」

「ご…ごめん、キラーもう大丈夫だから手離して。」

今フィールは、キラーに後ろから抱きしめられている状態だった。

「あぁ…すまない。」

「ったく、何やってやがる。」

少し前のほうから、キッドの呆れた声が聞こえてきた。

「ごめんなさい…あっ…お頭、あそこの店に行きたいです。」

と言いフィールは、一軒の店を指差した。
その店は、シルバーアクセサリーを扱う店だった。

「お前、反省してるか。」

「してます、流石に痛いのは嫌ですし…お頭?」

キッドは、スタスタとある場所に向かって歩きだした。
歩くのをやめ、後ろ振り返り…

「あの店、行きてェんだろうが。」

「はい。」

満面の笑みでキッドがいる場所まで転ばないように歩いた。
そして、約三時間後…

「良い買い物ができました。」

フィールは、上機嫌で買い物袋を握りしめていた。
生き生きとしているフィールとは、正反対に少し疲れ気味のキッド達の姿があった。
次の場所に移動するために歩き出した。
歩いていると、前方に何かを発見し『あっ』とフィールが声を上げた。
そして、次の瞬間その物体に向かって駆けだした。

「おい、フィール。」

キッドが駆けだすフィールを捕まえようと手を伸ばすが虚しく空をかいた。
カツカツと音を立てながら走るフィールの前には、一匹の怪我をした黒猫がいた。
黒猫は、吃驚し路地裏に逃げ込んだ。
すかさずフィールもその黒猫の後を追いかけた。
キッド達も慌てて、フィールの後を追ったがすでにフィールの姿は何処にも無かった。

「チッ…おいキラー、フィールを探すぞ。」

「分かってる。」

と言うとキッド達は、フィールを探し始めた。
一方その頃、フィールは黒猫を追って薄暗い路地を奥へ奥へと進んでいた。

「待って。」

黒猫を呼び止めようと、必死に喋りかけた。
すると、黒猫は駆けるのを止めフッと後ろを振り返った。

「良かった、止まってくれた。」

と言いフィールは、走るのを止めゆっくりとした足取りで猫に近づいた。
そして、近くまで寄ると屈み優しく黒猫の頭を撫でた。
黒猫は、目を細めゴロゴロと喉を鳴らした。

「さっきは、驚かせてごめん。」

ヒョコヒョコと足を庇いながら黒猫は、フィールにすり寄った。

「ニャー」

「可愛いな。」

満面の笑みを浮かべながら黒猫と戯れていた。

「あっ!?
右目、怪我して…」

黒猫の右目には、痛々しい傷があった。
フィールは優しく黒猫を抱き上げた。
「君の傷の手当しなきゃ。
さて、船に戻りますか……ってココどこ?」

必死に黒猫を追いかけていたフィールは今、自分が何処にいるか分からなかった。
キョロキョロと辺りを見渡し、分かった事は薄暗い路地裏という事だけだった。

「…やばいな。」

と呟いた言葉が、薄暗い路地裏にこだました。


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