第1話

まだ夜が明けきらぬ朝。
辺りは、まだ闇が支配していた。
フィールは、のそのそとベッドから起き上がり自室を出た。
そのままの足取りで甲板に出た。
静かな船には、波の音と船が進む音だけが響いていた。

「静かだな…」

ポツリッと呟いた言葉は、暗い海に吸い込まれるように消えていった。
フィールは、何をするでもなくただ甲板に座り暗い海を綺麗な星空眺めていた。

「クシュン…寒い。」

そう言って、ブルリッと震えた。
冬島の海域に入っているため、気温は低く寝ていたままの恰好で外に出るには寒い気温だった。
けれどフィールは、一向に自室に戻ろうとはしなかった。
部屋でもう一度寝る気分には、なれなかった。
体は睡眠を欲しているはずなのに、心がそれを拒絶していた。
どれぐらいそうしていたのか、暗かった空は白んでいた。

「………空が明るくなってきた、そろそろ誰か起きて…こないか。」

苦笑いをしながらゴロリッと寝転がった瞬間ゆっくりとドアが開いた。
寝転がったまま、目線だけドアの方にむけた。
すると開いたドアからキラーが出てきた。

「あっ…キラーおはよう、今日も起きるの早いね。」

「あぁ、おはよう。
また、寝れなかったのか。」

「まぁ…うん、そう。」

「そうか、ところでフィール、お前いつからここにいる。」

「うーん、何時からいるだろう、空が明ける前から居るはず。」

寝転がるのをやめゆっくりと起き上った。

「そんな薄着でか。」

「そうですよ。」

キラーは「はぁ…」と短くため息をついた。

「ため息つかなくても…」

「温かい飲み物を淹れてやるから、服を着替えてこい。」

「では、紅茶希望で。」

と笑いながらフィールは、立ち上がった。

「あぁ、わかった。」

それに続きキラーも食堂に向かうべく立ち上がった。
フィールは、早足で自室に戻り素早く着替え出した。
右の袖が異様に長いカットソーに、今一番気に入っているサロペットに編上げのニーハイブーツを合わせ。
じゃらじゃらとアクセサリーを付け、左のサイド編み上げた。

「よし…完成。」

と言うとカツカツとヒールを鳴らしながら食堂に向かって歩きだした。
食堂の扉を開けると丁度キラーがテーブルにカップを運んでいるところだった。

「着替えてきました。」

そう言いカップの置かれたテーブルの椅子に座った。
そして、置かれているカップを手に取ると一口、口に含んだ。

「ふぅ、温まる。」

「………フィール体は、大丈夫なのか、目の下隈ますます酷くなってるぞ。」

「眠いんでけど…眠るのが怖くて…でも少しは眠れてる大丈夫。」

「そうか、あまり無理はするな…そう言えば航海士がもうすぐで次の島に着くと言っていた。」

「本当今回は、曇ってるから島に降りれるかな。
新しいアクセサリーが欲しいんです。」

「お前あんなにあるのに、まだ欲しいのか。」

少し呆れながら言った。

「沢山あっても困らないから。」

とフィールは、満面の笑みで笑った。

「そうか」

「早く島に着かないかな…ってまだ行けるって決まってない。」

「大丈夫さ、きっと行けるさ。」

そう言うとキラーは、フィールの頭を優しく撫でた。

「だと良いけど…
ところで、みんな起きてくるの遅いですね。」

「そうだな。」

「起こしに行ってきます。」

今度は先ほどまで浮かべていた笑みとは違い、何かを企むかのようにニヤリッと笑い席を立った。
そして、軽い足取りで食堂を後にした。
キラーは、その後ろ姿をマスクの下で微笑みながら見送った。

back
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -