美人薄命

フィールは数日前に余命宣告を、受けたにもかかわらずを何時もと変わらぬ笑みを浮かべていた。

「昔から、美人薄命って言うでしょ。」

ベッド脇に置いてあるイスに腰かけているシャチに話しかけた。
シャチの表情は笑みを浮かべるフィールとは反対に、悲しみに満ちていた。

「お前は…フィールは、美人なんかじゃない。」

「彼女に向かってそれはないんじゃない。」

と軽い口調で言ったフィールに対しシャチは、悲痛な面持ちを浮かべる。

「だって…美人でなければ、長生き出来るだろ…だったら。」

何度も『美人じゃない。』と繰り返し言った。
フィールは、笑みを絶やさずにシャチを見ていた。

「何で、そんなに笑っていられるんだよ。」

消えかけそうなほど、弱々しい声で問いかけた。

「だって…私まで泣いたら、誰がシャチを慰めるの。」

「えっ!?」

シャチは、自分でも気付かずに涙を流していた。
シャチの涙をフィールは、優しく指で拭う。
次々と溢れ出る涙と漏れる嗚咽を噛み殺し静かに泣いた。
溢れ流れた涙は直ぐには止まらず、シャチの頬とフィールの指を濡らす。
暫く経ちようやく止まった涙にシャチは、居心地が悪いのか顔を逸らした。

「おれ…今、めっちゃカッコ悪い。」

とボソッ呟いた。

「そんな事ない、私嬉しかった。
シャチが真剣に私の事を、思ってくれてるんだって感じた。」

『でもね…』とフィールは、ポツリッと本音を口にした。

「本当は、私も怖いよ…。」

泣きそうになるのをグッと堪え笑みを浮かべた、フィールをシャチは咄嗟にギュッと力強く抱き締めた。

「シャチと離れ離れになりたくない…私は、まだ生きたいだから…」

『諦めない。』と言いギュッとシャチを抱き締め返した。
気丈に振る舞うフィールの腕が微かに震えていたのをシャチは、気付かないフリをする。

「そうだな…おれも諦めない、だからずっと一緒に居よう。」

二人は、静かに誓いあった。
此れからもずっと一緒に居られるようにと。



(fin)
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