双子症候群

※学パロ、兄妹

フィールは、双子の兄であるキラーに恋愛感情を抱いていた。
日毎に強くなる想いは、フィールの心を支配していった。

後数分もすれば、始業のチャイムが鳴る時間。
フィールは今まで自分の斜め前に座っている、キラーへ向けていた視線を戻し教科書を開いた。
次の授業である古典の教科書をペラペラと当てもなく捲る。
ページを捲るのを止め、たまたま開いたページを見た。
そこには、百人一首が載っていた。
フッとある一首が目に入る。
そのを歌を読んだフィールは今の自分と重なる歌に涙がこみ上げてくるのを、グッと堪えながらチャイムの音が鳴るのをどこか遠く感じ静かに教科書を閉じた。
ガラッと音を立てて、教室のドアが開き教師が入って来た。
フィールはガタッと音を立て椅子から立ち上がった。

「先生…気分が悪いので保健室で休んできて良いですか?」

「あぁ、構わないが一人で平気か?」

「大丈夫です。」


とだけ言うとフィールは、教室を後にした。
皆が心配そうに見ていた中、一人キラーだけが訝しげな眼差しで見た。
教室を後にしたフィールの歩みは、保健室ではなく屋上の方に向かっていた。
薄暗い階段を上がり、古びたドアがギーッと音を立て開く。
屋上に出ると冷たい風が頬を撫でる。
そのままフェンスまで歩き、フェンスを握り締めた。
握り締めたフェンスは、ガシャンと音を立て虚しく消えた。

「玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする……か、確かにそうかも。」

そう呟きズルズルッとその場に座り込んだ。

「……もう、無理だよ。」

涙が零れ落ちるのを必死に耐えていた。

「フィール、此処に居たのか。」

静かだった屋上に聞こえた声にフィールは、吃驚し慌てて振り向いた。

「なっ…キラー、何で…今授業中。」

「様子がおかしかったからな、気になって抜けて来た。」

「何それ、私なら平気だから授業に戻ってよ。」

「今にも泣きそうな顔の何処が平気なんだ。」

と言いフィールの目の前まで、来てしゃがんだ。

「平気だってば、ほっといてよ。」

「フィール。」

諭すような声色でキラーは、フィールの名前を呼ぶ。

「何なのよ。」

と叫びフィールは目の前にしゃがんだ、キラーを押し倒し馬乗りになった。

「兄面しないで。」

「兄面って一応、数分の差とはいえ…おれはお前の兄だ。」

キラーは、冷静に言い放った。
けれどその言葉は、何処が自分自身に言い聞かせているようにも聞こえた。

「そんなの解ってる、私達は兄妹だって…でも私はキラーの事兄として見てない。」

大きな瞳に溜まっていた涙が、堰を切ったように溢れだしフィールの頬を濡らした。
一度流れた涙は、止まることを知らず次々と溢れ出す。
そしてフィールは、キラーの両頬押さえキスをした。
そのキスは、微かに触れるぐらいだった。

「……愛してるのよ。」

今にも消えていきそうな、か細い声で言った。
だがフィールは、言った瞬間に後悔が一気に襲ってきた。

「ごめん。」

とだけ言うと、キラーの上から退きその場から逃げようとした。
けれど強い力で引っ張られ、今度は先ほどとは逆にフィールが押し倒されていた。

「おれだって…妹だと、思ってなどいない。
兄妹だからと思っていたが…」

と言うと先ほどフィールがしたようにキラーは、キスをした。

「フィール、愛してる。」

その言葉を聞いた瞬間、止まり掛かっていた涙が溢れ流れた。

「二人で何処までも…堕ちていこう。」

「うん。」

キラーは、フィールの流れ落ちる涙を掬いながらもう一度キスをした。
二人は神に背く行いだと理解しつつも、表情は穏やかな笑みを浮かべていた。



(fin)
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