Love sickness

「見つけました、ユースタス・キャプテン・キッド。」

薄暗い路地にフィールの声が響き渡った。
袋小路の路地でキッドは、フィールに背を向け立っていた。
そして、ゆっくりと振り返りフィールを見据える。
口許に、笑みを浮かべながら。
キッドの顔を見た瞬間、モヤモヤとした感情が沸き上がってきた。

「今日こそ、逃がしはしません。」

その感情に気付ないように、自分言い聞かせるように刀を構えた。

「おもしれェ、掛かってこい。」

フィールを挑発するように言い放つ。
キッドの言葉を聞き弾け飛ぶように、飛び出し斬りかかった。
それをキッドが紙一重でかわす。
ただフィールが攻撃をし、キッドがそれを避けるそのやり取りが続く。
攻撃するフィールの体力が徐々に、無くなり攻撃スピードが遅くなる。
反対にキッドは、たいして疲れた様子を見せることなく口許に笑みを浮かべる。
余裕の笑みを浮かべるキッドを目の当たりにし、悔しさから唇を噛み締めた。

「クソッ」

短く吐き捨てるように言い、ギュッと刀の柄を強く握り締めた。
半ば自棄になりながら、刀を振りかぶりキッド目掛け降り下ろす。
虚しく空を斬ると思っていた、予想とは違う光景が目の前に広がった。
重力に従ってスピードを増す刀の切っ先がキッドの体に食い込み皮膚を引き裂いた。
引き裂かれた場所からは、赤色が溢れ出る。

「何故、攻撃を………避けられたはず。」

「お前に殺されんのも良いと思ったからだ。」

何処か楽しそうに言った。

「馬鹿ですね。」

フィールは着ていた上着を脱ぐと、キッドの傷口の止血を始めた。
止血を行う手が微かに震えていた。
フッと視線を感じ目線を上げるとキッドと目が合う。
フィールは自分の中で気付かない振りをしていた気持ちが沸々と沸き上がって来るのを感じた。
沸き上がった感情は留まる事を知らず、フィールの胸の内を満たした。

「この感情は…恋。」

フィールは、無意識に呟いていた。
その声はキッドの耳にもしっかりと届いた。
口角が緩やかに上がり…

「フィール、お前はおれのものだ。」

と言うとキッドは、フィールを抱き上げ肩に担ぐ。
そして、キッドは自分の船を目指し歩き出した。



(fin)
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