nightmare

暗い闇の中フィールは、一人幼子のように泣いていた。
どれだけ泣いても、涙は止まることを知らず流れ続ける。
ただ心に、悲しみが溢れていた。

『何で…キッド…』

と呟いた瞬間…
フィールは、目を覚ました。

「…今のは…夢…」

額から流れる汗を拭う。

「嫌な夢…」

フィールは布団を頭まで被り、もう一度眠りにつこうとした。
けれど先ほど見た夢のせいで、不安に襲われ眠る事が出来ずにいた。
寝返りをうつ度に静かな部屋に布団の擦れる音が響く。
寝付けずにいたフィールは、ベッドから起き上がると静かに部屋から出ていった。
ヒンヤリとした夜の空気が船内を包み込む。
歩みを進めると、時折床板が軋み音を立てる。
音を立てないようにゆっくりとした足どりで、目的の場所へと向かった。
目的の部屋にたどり着くと、そっと扉を開けた。
部屋の中に入ると、音が立たないように慎重にベッドに近づいた。
ベッドの中には規則正しい寝息を立て、眠るキッドの姿があった。
そっとその場に座り、眠るキッドを眺めた。
長い間フィールは、キッドの寝顔を見つめていた。
そして安心したのか、ゆっくりと立ち上がり自室に戻ろうとした瞬間。
フィールは、強い力で引っ張られ気がつくとキッドの腕の中にいた。
いきなりの出来事にフィールは、悲鳴すら上げられず目を見開き呆然としていた。

「……起きてたんですか。」

少しの間呆然としていたフィールが、おずおずと喋り出した。
そして、フィールの言葉を聞いたキッドは口元に笑みを浮かべながら言った。

「あんだけ見られたら誰だって起きるに決まってんだろが。」

と言われ恥ずかしさから、頬を紅く染める。

「……そうですか…。」

「でフィール、お前何しに来た。
まさか、夜這いか。」

フィールをからかう様に言った。

「よ…よば…違います。
嫌な夢を見て…寝れなくて。」

最後の方は段々と声が小さくなっていた。

「どんな夢だ。」

キッドは、見た目とは裏腹に優しくフィールに語りかけた。

「真っ暗場所で一人泣いて…ただ哀しみだけが溢れている、そんな夢を見て不安で寝れなかったので。
でも…もう、あん…し……。」

フィールはキッドの温もりに安心したのか、最後まで言葉を紡ぐ前に眠りについた。
言葉は規則正しい寝息へと代わり、無意識にキッドの温もりを求め擦り寄った。

「何…勝手に寝てんだ。」

と言いながらフィールをギュッと抱きしめながら自分も眠りについた。



(fin)
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