涙雨
ポツポツとほんの少し雨が降り止んだ。
その光景を見ていたフィールは、ポツリッと呟く。
「…涙雨。」
フィールが呟いた言葉は、隣に座っていたキッドの耳に届いた。
「なんだ、それ。」
「えっと…悲しみの涙が化して降る雨の事。」
キッドは、素っ気なく返事を返した。
「気の無い返事。」
「あぁ?そんなことねェ。」
「どうだかね。」
フィールは、窓に向かって手を伸ばした。
外側のガラスに伝う、水滴を指でなぞる。
「本当、涙みたい。」
『誰の悲しみだろうね。』と言いソファーに座り直した。
「そう言えば、私キッドが泣くところ見たこと無いかも。」
「当たり前だ、おれが泣くとかあり得ねェだろう。」
「まぁ…そうだよね。
じゃあ、キッドが泣きたくなったら私に言って。」
「何でだ?」
キッドは、怪訝な表情を浮かべた。
怪訝な表情のキッドとは、反対にフィールは笑みを浮かべる。
「泣かない、キッドの代わりに私が泣くから。」
それを聞いたキッドは、フッと一瞬笑みを浮かべた。
「機会があったらな。
まぁ、ねェと思うが。」
とフィールの頭に手を置くと、荒く頭を撫でた。
「うん。」
フィールは、幸せそうに満面の笑みを浮かべた。
(fin)