キャンディ

海風に乗ってフィールの吐く煙がフッと広がり、そして消えていった。
フィールは、船縁にもたれ掛かりながら何をするでもなくボーッと煙草を吸っていた。
口から離していた煙草を吸おうとした時、人の気配がしそちらに目線を向けた。
目を向けた先には、エースがフィールに向かって歩いてくるのが見えた。
エースはフィールの目の前にくると手に持っていた、煙草を奪うとそのまま吸った。

「ゴホッゴホッ、おまッ…よくこんなマッズイもん吸ってられるな。」

「そかな?もう、なれたよ。」

と言いエースの手にある煙草を取り返そうと手を伸ばした。
けれど、その手は空しく宙を掻いた。

「それより返してよ、私の煙草。」

「そんなんより、もっと良いもんやる。」

と言いながら、煙草を海に投げ捨てた。

「あぁーちょっとなに捨ててるの、あれが最後の一本だったのに。」

船縁に手をつき、煙草が投げ捨てられた海を忌々しげに見つめた。
そして、『はぁ…』っと深いため息を吐きながらゆっくりと投げ捨てた張本人の方を見た。
張本人であるエースは、ニコニコしながらズボンのポケットを漁っていた。

「おっ…あったあった。」

と言うとフィールの目の前にキャンディを出した。

「なにそれ。」

「なにって、飴。」

「そんなの、見たら分かるわよ。」

「じゃあ何で聞いたんだよ。」

とエースが言うとフィールは、フイッと顔をそらし『何となくよ。』少し顔を赤らめながら言った。

「って、そんな事より…煙草より良いモノってもしかしてこの飴。」

「おう。」

エースは、満面の笑みを浮かべながら答えた。

「はぁ…もう、それでも良いよ。」

飴を貰うとガサガサと包装を剥ぐと、淡いピンク色の飴が姿をあらわした。
その飴をパックッと口に含むと口の中一杯にイチゴの味が広がった。

「あっ…美味しい、イチゴ味だ。」

「おれも一口。」

と言いチュッとキスを落とした。
そして、最後にペロッとフィールの唇を舐め離れた。


「おっ…ほんとだ、イチゴ味。」

満面の笑みを浮かべるエースと口を押さえ顔を真っ赤にしたフィールの姿があった。



(fin)
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