轟く雷鳴

雷鳴が響く度、震えながら枕を抱え…
両親が眠る部屋を訪れ、二人に抱きしめてもらいながら眠った。
幼い頃の思い出。
自分では、もう雷など平気だと思っていたある夜の日の出来事…

その日は嵐のため、大雨が降り海は荒れ雷までもが鳴り響いていた。
そんな中フィールは、一人大きく揺れる船内をあても無くウロウロと歩いていた。
絶えず鳴り響く雷の音に肩を震わせながら怯えていた。
次の瞬間今までより、一層大きな雷が鳴り響いた。
フィールは、小さく悲鳴を上げるとその場にしゃがみこみ手で耳を覆った。

「うぅ…もう、嫌。」

と呟いたフィールの目には、うっすらと涙が滲んでいた。暫くの間耳を押さえ、うずくまって居ると前方から誰かが近づいてくる気配を感じた。
フィールは恐る恐る、顔を上げた。視界に今一番、会いたい人の姿を捉え立ち上がると一目散に駆け出した。
そして、ギュッと抱きつくとか細い声で『キラーさん』と呼んだ。

「フィール、何故こんな所でうずくまって居たんだ。」

ビクビクと震えるフィールの名前を呼びながら、まるで幼子をあやすかのよう喋りかけた。

「あっ…いや、その…雷が鳴って一人で居るのが怖くて、思わず部屋を飛び出してしまったんです。
キラーさんは、何故ココに?」

「前に小さい頃の話しを聞いて、気になってな。」

優しく頭を撫でそう言った。

「そうだったんですか。」

少し落ち着いてきたフィールだが、まだ震えていた。

「あっ…あの、キラーさん。」

「何だ?」

「あの…ですね、い…一緒に寝ちゃ…駄目ですよね。」

おずおずと上を見上げながらそう言った。
キラーは、その様子を見マスクの下で微笑んでいた。

「今回だけだぞ。」

「はい。」

すると、次の瞬間フワリッとフィールの体が中に浮いた。
抱き上げるとキラーは、そのまま自室に向かって歩き出した。
フィールはキラーの腕の中で、幸せそうに微笑んでいた。



(fin)
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