私達の鎮魂曲

※死ネタ

静かな部屋に、布の擦れる音だけが虚しく響いていた。
フィールは、ベッドの上で布団にくるまり物思いにふけっていた。
そんなフィールの手には、一枚の手配書が握りしめられていた。
そして部屋中に、ビリビリに引き裂かれた新聞が散乱していた。
チクタクと時計が時を刻みフィールは、弾かれたかのようにベッドから起き上がり時計を見た。

「もうすぐ…もうすぐで、彼が…エースが逝ってしまう。」

ポツリッと呟いた言葉は、静かな静寂に飲み込まれてしまった。
フィールは、目を瞑り最後にエースと逢った日の事を思い出していた。



早朝ドンドンッと、家のドアを少し荒々しくノックをする音でフィールは目を覚ました。
眠たい目を擦りながら、ベッドから抜け出し来客者を確認するため、家のドアを開けた。
ドアを開けた途端ギュッと抱きしめられた。

そして…

「フィール、会いたかった。」

と耳元で聞き覚えのある声が聞こえた。

「私も会いたかった…エース。」

と言うとフィールもギュッとエースの広い背中に腕を回した。

「会いに来てくれるのは、嬉しいけど…少し時間早くない?」

「ん?あぁ…急にフィールに会いたくなってさ。」

そう言い、笑ったエースの顔は何時もの笑顔と違い少し憂いが含まれていた。

「そうなんだ…ココで、こうしてても仕方ないから部屋に上がって。」

「いや、もう行くよ。」

「えっ!?………もう、行くの?」

「あぁ、やる事があるんだ。
けどそれが、終わったらフィールに一番に会いに来るからさ。」

満面の笑みを浮かべた。

「絶対に一番に、会いに来てよ…約束だからね。」

と言い小指を出すと二人は指切りをした。
指切りを終えるとエースは、フィールに背中をむけ家を後にした。

「行ってらっしゃい。」

手を振り小さく、そう言った。
それからのフィールは、指折りエースが家を訪ねて来るのを心待ちにしていた。
しかし、その日が来ることは無かった。
フィールに悲しみを告げる、一枚の紙が家に届けれられてしまった。
彼の死期が書かれた紙が…
悲しみに明け暮れる彼女が最後にフィールが見たエースの姿は、誇りが刻まれた逞しい背中で…

「エースの嘘つき、終わったら…一番に…会いに来てくれるって指切りしたのに。」

目からは涙が、ポロポロと溢れ止まる事を知らずフィールの頬を濡らした。
そして街中から、海軍の勝利に歓声が上があがり…
その歓声が聞こえる度に、フィールの心はしらけていった。

「貴方がイナイ世界なんて…」



ソンナ世界ニ意味ハ無ク

世界ノ全テガ色褪セテ
貴方ノイナイ日々ニ


意味ヲ無クシタ生ニ終ワリヲ告ゲ


今…
私達ノ鎮魂曲ガ奏デ始マル




(fin)
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