刻み逝く時

時が過ぎるのが怖かった…
貴方と一緒に居れる時が少なくなるから

今日が過ぎ

一歩、一歩
死に歩み寄って逝くのが

怖かった…

だから、いつも貴方の傍らに居たいと願っていた



静かな部屋に本をめくる音と時計が時を刻む音が聞こえていた。
部屋の持ち主であるローは、椅子に座り分厚い医学書を読んでいた。
そのローの腰には、フィールが抱きついていた。
何時もの事のため、気にする様子もなく黙々と本を読み進めていた。
抱きついているフィールの体は、微かに震えていた。

「キャプテンは、意地悪です。
私が時計嫌いなの知ってる筈ですよね…」

顔を上げローを見上げるように言った。
フィールは時計というより、時が過ぎることに恐怖感を抱いていた。
そのため、船には時計など時を刻むモノはローの部屋を除き置いて無かった。

「嫌なら、来なければ良いだけだろ。」

目線は、本のまま言い放った。

「やっぱり、キャプテンは意地悪です…
キャプテンの傍に居れないのが、一番苦痛なの知ってる筈ですよ。」

そう言い、より一層ローに強く抱きついた。
ローは、読んでいた本を静かに閉じフィールを見ると口元にだけ笑みを浮かべた。
そして…

「フィール。」

と普段では、考えられないほど優しく名前を呼んだ。
名前を呼ばれたフィールは、ゆっくりと顔を上げた。
ローは顔を上げた、フィールの顎を掴むと深く深く口付けをした。
静かな部屋にフィールのくぐもった声が響いた。
長い口付けが終わり、ゆっくりと離れた。
腰に抱きついていた腕を離し、ローの首に回し首もとに顔を埋めた。

「……キャプテン、愛してます。
ずっと、ずっと一緒に居て下さい。」

そう呟いた、フィールの頭をニヤリと笑いながら撫でた。

「仕方ないから、一緒にいてやるよ。」

至極楽しそうな声色でそう言った。



(fin)
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