濡れた頬に

島に停泊中のキッド海賊団。
大半のクルーが島に上陸しているため、船内は静まり返っていた。
外はしずしずと霧雨が降っていた。
フィールは、する事もなく自室で本を読んでいた。しかし気になる事があるのか、本に集中出来ないでいた。
開かれた本は、一向に次のページへ進む事無く同じページで止まっていた。
パタンッと音を立てて本が閉じられた。

「駄目、集中出来ない。
はぁ…最悪だ。」

と言うと立ち上がり、自室を後にした。
そして、雨の降る甲板へと出てきた。
しずしずと降る霧雨は、少しずつだが着実にフィールの体を濡らしていった。

「何やってるんだろう、嫉妬とか…別に付き合ってもないくせにね。」

ポツリ、ポツリと言葉を呟いた。

「馬鹿みたい。
ただ…酒場に行っただけなのに、こんなに胸が苦しくなるなんて。」

と言い、自嘲した笑いが口から洩れた。
ただ何をするでもなく、ボーッと暗い海を眺めていた。
長時間雨にうたれていたため、髪は濡れ頬に張り付き服もまた張り付いていた。
海を眺めていると、背後から気配を感じ慌てて振り返った。

「誰…って、キラーさんもう帰ってきたんですか早いですね。」

フッとキラーの手が伸びてき、雨で濡れたフィールの頬にそっと指先だけで触れた。

「キ…キラーさん?」

キラーは名前を呼ばれ自分が、無意識にフィールの頬を撫でているのに気づき慌てて手を離した。

「すまない。」

「いえ、気にしてませんから。」

「フィール」

「何ですか?」

「体が冷えているぞ、風邪をひく部屋に戻ったほうが良い。」

「そうですね、では戻ります。
キラーさん、おやすみなさい。」

「あぁ、おやすみ。」

フィールは、自室に戻るため甲板を後にした。
足早に自室に戻り、バタンッとドアを閉めるとズルズルとドアに背中を預け座り込んだ。

「…………キラーさん、期待しちゃいますよ。」

頬を赤く染めながら、先ほどキラーに触れられた頬に触れた。
雨に濡れた体は、冷たくひえていたがキラーが触れた頬だけだ熱を持ったように熱く感じた。


濡れた私の頬に貴方が触れた…



*お題サイト確かに恋だった様より
『君に、触れる』

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