向日葵の恋

※悲恋

大好きです
愛しています
胸が苦しくなるくらい

………でも
言ってしまったら 今の関係が崩れてしまう

だって…

貴方は 私を見ていないから
貴方が 見ているのは
 
別の人だから



「今日もいい天気ですね、お頭。」

フィールは、満面の笑みを浮かべながらキッドに喋りかけた。

「なに暢気なこと言ってんだ、状況考えろ。」

「だって…そう思ったんですもん。」

「馬鹿か、お前んなこと言ってねェでさっさと戦ってこい。」

眉間の皺をより一層濃くしながら、フィールに言い放った。
けれど言われた本人は、気にした様子もなくただボーッと戦場とかしている敵船を見ていた。
いや、敵船で戦っている一人の男を見ていた。
フィールの視線の先には、華麗に敵を倒していくキラーの姿があった。
キラーを見つめる目には、微かに憂いが含まれていた。
しかし、次の瞬間ゴンッと鈍い音が響いた。

「いった…何するんです、痛いじゃないですか。」

フィールは、殴られた後頭部を擦りながら言った。

「キラー見てねェでさっさと行け。」

「分かりましたよ、行けば良いんですね…では、行ってきます。」

そう言うと、フワリと舞うように敵船に乗り込み、素早い動きで次々に倒していった。
戦いは、キッド海賊団の圧勝だった。
その夜船では、勝利を祝う宴が盛大に開かれていた。
テーブルの上には、色とりどりの料理と沢山のお酒で満たされていた。
船員達は、思い思いに騒ぎながら宴を楽しんでいた。
そんな中フィールは、隅の方であまり飲めないお酒を呷っていた。
目線は楽しそうに談笑する、キラーと最近新しく船に迎えた女のコックを無意識に見ていた。
フィールは、知らず知らずのうちにお酒を飲むペースが速くなっていた。
それに気づいた人物がゆっくりとフィールに近づいた。

「フィール、そのぐらいで止めておけ。」

制止する声が聞こえ、フィールはゆっくりと声が聞こえた方を見た。
そこには、先ほどまで自分が無意識に見ていたキラーの姿があった。
けれどフィールは、キラーを無視し前を向き直しお酒を口に運ぼうとした。
しかし、その手はキラーのより止められた。

「何…離してキラーには、関係ないでしょ。」

「飲めない酒を無理して飲むな。」

「無理なんかしてない。」

と言うと勢いよく立ち上がった。
けれどいきなり立ち上がったため、一気に酔いが回りフラッと倒れそうになった。
そこをキラーが慌てて支えたためフィールは、床に倒れずにすんだ。

「無理をするからだ。」

「………ごめんなさい。」

そのやり取りに気づいたコックがパタパタと足音をたてなが二人に近づいた。

「キラーさんに、フィールさんどうしたんですか?大丈夫ですか?」

「あぁ…すまないが、水を一杯持ってきてくれないか。」

その声がひどく優しく、愛する人に向けられる声色だった。
それだけで、フィールの心をかき乱すには十分過ぎるものだった。

「分かりました、すぐに持ってきますね。」

キラーに笑顔を向け、返事をしたコックを見て無意識に口が動いた。

「いらない。」

「ですが、飲まれたほうが「いらないって言ってんだろ。」

殺気を含んだ怒声にコックは「ひいっ」と小さく悲鳴を上げキラーに縋りつき、賑やかだった周りがシーンッと静まりかえった。

「…フィール。」

呆れを含んだキラーの声が聞こえ。

「ごめんなさい…頭と酔い醒ましてきます。」

そう言うと、慌ててフラフラの足取りで甲板にやってきて腰を下ろした。

「何やってるんだろう、馬鹿だな。」

自嘲気味に笑った。
フィールの切れ長の目が涙で潤んでいた。
涙を流すのを必死に堪えていた。

「こんな所にいたのか。」

「あっ…お頭…今…頭と酔いを醒ましてる最中…です。」

そう言い、くしゃりと笑った。

「そうか」

と短く言うとゆっくりとキッドは、フィールの横に腰を下ろした。
それから、二人は一向に喋ることなく長い沈黙が続いた。
その沈黙を破ったのは、フィールだった。

「やっぱり…可愛くて女らしいほうが良いですよね…私とは、正反対の…」

膝を抱え顔だけをキッドに向けた。

「……」

「女の私から見ても彼女は、魅力的だと思うんです。
可愛い顔してますし、華奢ですし…守ってあげたくなる感じ…ですし…総てが私とは正反対ですよ。」

確かに総てがフィールとは、正反対だった。
キッド海賊団の戦闘員であるフィールは、強く意志の強い切れ長の目は、女性というよりは少年に近い雰囲気を醸し出していた。

「そりゃ…惚れますよね。」

そう言ったフィールの目からは、ついにポロポロと涙が零れ溢れてきた。

「泣きてェ時は、泣け。」

キッドは、ぶっきらぼうにガシガとフィールの頭を撫でた。

「お頭…今だけで…良いんで胸…貸して下さい。」とフィールが言うとキッドは、返事の代わりにグッとフィールを自分の方に引き寄せた。
そして、フィールはキッドにしがみつくと嗚咽を漏らしながら泣き出した。
その声は、次第に大きくなっていった。
数分後、落ち着きを取り戻したフィールは、少し恥ずかしそうにしながらキッドから離れた。

「お頭、ありがとうございました。
後…みっともない所見せちゃいましたね。」

「気にしてねェよ。」

「そうですか、何だか泣いたらスッキリしました。
まだまだ、キラーの事好きですし…二人を見てると苦しいですけど何とかなりそうな気がしますよ。」

「そうか、まぁ…泣きたい時は、いつでも…胸貸してやりよ。」

「ありがとうございます、ではその時はよろしくお願いしますね。」

と吹っ切れたように笑った彼女の笑顔はとっても綺麗だった。


(fin)
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