ケチでいいもんね
かたくなな君
「へえ…。何かやるのか?」
愉しげに口角を吊り上げ余裕たっぷりのグレィス。どうにか一杯食わせてやろうと地面を蹴り高く跳んだ。
「 剣風雹粒!!」
「っ!?」
一番得意な剣技と風の煌像術の合わせ技を見事に繰り出したジュリアン。もらった! と手応えを感じたものの間合いが甘かったのか寸でのところで躱された。
「…っ」
「うっわ! ジュリアン今の何?」
「はああぁ……何で避けるんだよ~! 今日こそ父さんから一本取れると思ったのに!!」
ガックリと肩を落としているとグレィスに頭を小突かれる。
「バァカ。一丁前に俺に勝とうなんて十年早いっての! それよりも今の技何だ? なんか剣からすごい冷気と氷の粒みたいなの!」
まだ未完成な技とはいえ多少は自信があった。それをいとも簡単に一蹴され気落ちするが、目の前の父は興味津々と瞳を輝かせており落ち込む暇もない。
ジュリアンはまた軽く溜息を吐いた。
「風を吹かせる煌像術…、あれが苦手でどうしても冷風になるからどうせならって最大限まで吹かせて得意な剣の技と組み合わせてみたんだ」
「合わせ技か!」
「何回も練習してるうちに冷風から小さな氷の粒が出る時あってさ、少しなら剣で操れる様になってきて…」
「へえええ! スゲェじゃん、自分で考えたのか?」
「そうだけど」
「ちょっともう一回やって見せてくれよ」
「やだよ」
「何で?」
「もっと上手くなるまでもう見せない!」
「いいじゃん! 何ならアドバイス出来るかも知れないし」
グレィスの属性は地と水だ。ジュリアンも僅かに同様の属性を受け継いでいる。助言を乞えば技も煌像術も上達するかも知れないが。
「うう…。でもなんか悔しいからやだ!」
「ジュリアンのケチー!」
「ケチでいいもんね」
「ったく誰に似たんだ? でもまあ思ったよりも元気そうだな。何か悩みでもあったのかと思ったんだけど?」
「あー、うん。ちょっとはあるかな…」
「何だ? 好きな女の子でも出来たか?」
「違うよ! 好きな子ならたくさんいるけどさ」
「わはは、たくさんいるのか! そりゃ間違いなく父さん似だ」
庭先でわあわあじゃれあって居ると部屋の中からサリベルの怒鳴り声が飛んできた。
「ちょっと、二人とも!! いつまでそうしてるの!? まさか晩ご飯食べないつもり?」
「げ! 母さん、ごめん今行く!」