このまま石になっちゃうかと思ったぜ!
かたくなな君
何とも情けない弱々しい声に比例してか、名前の主は現れる気配すらない。むしろ逆に心配になってきた。
「あ。もしかしてあいつ、じい様に捕まったんじゃ……てか絶対そうじゃん! ったく、今日は厄日かなんかかぁ?」
大袈裟に嘆いていると、息を切らしながら小走りでこちらに向かってくるラインアーサの姿が目に入った。途端に静止の煌像術が解け、身体の自由が効くようになった。しかし脚が極限まで痺れていた為直ぐに立ち上がる事が出来ない。
「っ…ジュリ! ごめん!! 遅くなった」
「待ってたぜーー!! アーサァァ!」
「立てる…?」
「うへぇ……こんなのへっちゃらだぜ! って言いたいんだけど、もうちょい待って」
立ち上がれないでいるとラインアーサが手を差し出してくれたが、まだ痺れが引かずやっと自由になった手脚を投げ出して座り込んだ。
「本当に遅れてごめん! ちょっともたついちゃって…」
「いや、どうせ来る途中じい様に捕まったんだろ?」
「う、うん…」
「やっぱりかー! じい様は鬼か!!」
「……罪人を庇う者もまた罪人に等しいのですぞ…ってめちゃくちゃ怒られた…」
「うわ、今の超似てたし! ったくアーサは関係ないって言ったのに。あー、やっと足のしびれ引いてきたぜ」
「ひどそうなら癒しの煌像術かけようか?」
両脚を伸ばしてまだ痺れてる所をさすっているとラインアーサが心配そうに顔を覗き込んでくる。
「もう大丈夫だって! でもめちゃくちゃしんどかった~。俺、このまま石になっちゃうかと思ったぜ! よっと!」
勢い良く立ち上がると全身伸びをしてそのまま軽く柔軟をし、ガチガチに固まっていた身体を解した。
「足、石畳の跡がすごいな……。どのくらいそうしてたんだよ。きつかったら今日の稽古は後日でも…」
「んー、一刻半ちょい? いやでもこの位でへこたれるなんて俺も情けないな。もう大丈夫だし稽古始めようぜ!!」
「一刻半?! ……やっぱり今度からは直ぐに謝った方がいいと思うよ」
「んー、まあそうだなー」
「ってもっと真面目に考えないと。俺はジュリの事…」
「はいはい。俺の事心配してくれてんだろ? ありがとな、俺が石になる前に来てくれてさ。さっすが俺の主! 感謝感激だぜ~!!」
やや語尾を強調してふざけると呆れたのかラインアーサは顔を顰めた。
「何言ってんだよ。ああもう、ずっとそんなだと知らないからな」