そこを何とか…!
かたくなな君
本当に分かっているのかと言った風の眼差しでジュストベルに睨まれる。
「……」
「本当にわかってるって!」
「……さて、私の部屋に着きました。まずは説明してもらいましょうかね?」
「え。何を?」
「何をですって? よくそんな口が利けますね、見なさい。この駄目になってしまった貴重な茶葉たちを!」
いつもよりも冷静さに欠けるジュストベルは声を珍しく荒らげて茶葉専用の棚を指差した。それだけ怒りが深いと言うことだ。
「あー・・・ああ! そういえば昨日風を吹かせる煌像術の練習してて…」
「何故に、私の部屋で?」
「いや特にここで練習してたって訳じゃあ無くて。あんまりにもあの技が苦手だからさ、歩きながらとか何かしながらとか常にやってたんだ。だってじい様も常日頃から練習しておく様にっていつも言ってるじゃん!?」
「常日頃とはそう言った意味ではありません」
「えー? じゃあどういう意味だ? まあ。でさ、昨日じい様のお使いでこの部屋に入った時にたまたまブワッてものすごい強風がこの棚にバーンって直撃、しちゃって…」
身振り手振りで説明すればする程、ぴくりとジュストベルの片眉が上がってゆく。
「……ほほう。ではこちらの未開封だった茶箱の封が切られているの何故です?」
「そ、それはその時に茶葉の瓶倒して何個か中身ぶちまけちゃったから新しいの補充しとこうと思って……やったんだけど、だめだった…? よね」
少しの沈黙の後、ジュストベルはうつむき加減のまま深く長いため息を吐いた。
「はあ……。我が孫ながらまっったく理解不能ですぞ、ジュリアン。呆れてものも言えないと言いたいところですが、今回はそうも行きません。この茶葉たちは特別思い入れがある物ばかりでした…」
「……そ、そうなのか」
「そうです。しかし。そもそもジュリアン、貴方にお使いを頼んだ私が愚かでしたね…」
「え…? もしかしてじい様怒ってないとか?」
「ええ。もう怒りを通り越して情けないと言うか、目を閉ざしてしまいたいほど世にも惨めな気持ちです」
「んん? ……な、なんかよく分からないけど俺、これからはほんとに気をつけるからさ。その、お仕置きだけは勘弁…」
意気消沈している様に見えたジュストベルだが声は硬く失望と怒りをかき混ぜた様な口調で冷たく言い放たれた。
「今回はそうも行かないと言った筈」
「げ! ごめんなさい…っ。そこを何とか…!」