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暑いせい(白鳥)


「ずるくない?え、どう考えてもずるいよね。だって普段あんなぼーっとしてて授業中だってしょっちゅう寝てて髪だって寝癖じゃどうかわかんないような腑抜けた髪型で試しにボールペンを髪に巻きつけていつ気付くかなってしてみたら全然気付かなかったようなバカな奴なのに、なんで、なんでっ.....!!!古都野ってサッカーやってる時はあんなかっこいいの!?」
「ああ、うん。確かにかわいいよなアフリカオオコノハズク。」
「話を聞け話を....!!!」

ダンっ!と机...は中庭なためないのでパチンと自分の膝を叩く。スカート越しに叩かれた太ももはパチンとは言わずパンとドンの中間のような中途半端な音を立てた。そんな私の横に腰を下ろしている友人白鳥はジトリとした視線を向けて眉間に皺を寄せる。

「ちゃんと聞いてるって。あれだろどの種のフクロウが好きかって話だろ。」
「まったくもって聞いてないじゃん!!てかさっきのフクロウの名前かい!てっきり木の葉のクズだと思ってたわ、落ち葉だと思ったわ。」
「アフリカオオコノハズクだクズ。」
「言ったな、今ズクでカモフラしてクズって言ったな。カモフラできてないからな!」

ぎゃいぎゃいと始まった言い合い(というより私が一方的に騒いでいる)によって一気にうるさくなるお昼休みの中庭。暑くなりだした天気のせいで人があまり居ないのが幸いである。

「話戻すけど!サッカーしてる古都野最高にかっこよくない?てかかっこよすぎない!?」
「はいはい、かっこいいな。」
「真剣にボールを追いかける顔がほんと最高だわ...。」

仲のいい友人である古都野のサッカーをする姿を今日の体育の時間初めて見た訳だけど本当かっこよかった。かっこよすぎてびっくりしてその思いの丈を聞いて欲しくて白鳥を中庭に連れ出した次第だ。普段のぼーっとした雰囲気からは想像できないような鋭い目つきでボールを追う姿はほんとやばかった。ギャップがやばい。

「お前さ、」
「なに?」
「.......古都野のこと好きなわけ?」

たっぷり間が空いたあと放たれた白鳥の言葉に私は「ん?」とつい聞き返した。

「だから古都野のこと好きなの?」

身体を曲げて膝に肘をつきながらこちらをじっと見上げる白鳥は表情を変えず淡々と言った。好きって...え、古都野のこと好きかって私に聞いたのかこの男は、え.....?

「なっ....!好きな訳ないし!」
「顔すごい赤いぞ。」
「だっだって最近暑いし!」

あー、暑い暑い!と私は手をパタパタと振って顔に風を送る。だけど雀の涙ほどの風はほっぺたを冷やすことなんてなく寧ろ熱い気温の中熱い風を送られて暑さが増している気がする。

「...まあ確かに暑いよな今日。」

肘をついたまま白鳥は暑いなんて微塵も思ってなさそうな涼しい顔で言った。何が暑いだ女子より白い肌しておいて...!手のひらにのった雪見だいふくみたいなほっぺた食べてしまうぞ!と白鳥の爆弾発言のせいで気が気じゃない私は白鳥のほっぺたに手を伸ばしてムイっと摘んだ。途端白鳥の眉が釣り上がり曲げていた背を真っ直ぐに伸ばした。

「おい!何すんだ!」
「あんたが余計なこと言うからお返し!」
「余計なことじゃなくて俺は思ったことを言ったまでだ!」
「あー!もー!うるさいうるさい!」

むにーっと白鳥のほっぺた想像以上に伸びる。眉間に皺の寄った表情と伸びたほっぺたがなんだか間抜けで笑っていると白鳥のほっぺたを掴む手が白鳥の手に捕らえられた。手の甲を覆うように私の手を捕まえたその手は皮膚の色に反して熱い。その熱さにびっくりしている間に白鳥の細長い指が私の指と指の間に入り込んでぎゅっと強く握られた。そこそこ強い力で握られた上に白鳥の顔は真剣そのもので怒らせてしまったのかなと少し焦る。

「しっ白鳥...?」
「あっいっいい加減にしろよ!肌に余計な刺激を与えないでくれ。」
「肌弱いの?」
「生まれつき日光とか外的な刺激に弱いんだ。」

刺激に弱い、そう言った白鳥の肌をみるとたしかに私が摘んでいた部分が結構赤くなっている。そこ以外にも中庭で陽の光を浴びていたせいか耳までほんのり朱に色づいていてそういえば中庭に連れ出したの私だったと思い出して少し悪かったなと思う。

「ごめんね、そうとも知らずに中庭に連れ出しちゃって。」
「べっ別にお前のためじゃなくて外の空気を吸いたかっただけだから。」

白鳥は顔を逸らしてぶっきらぼうに言った。可愛げのないのは今に始まったことじゃないので「ならいいけど。」と簡単な返事をした後視線を未だに掴まれたままの手に向ける。さっきより幾分力は弱まったものの白鳥の手はしっかりと私の手を掴んで離さない。じわじわとぴったりとくっついた手と手の間に汗が滲んできて蒸れて少し気持ち悪い。そろそろ離してくれないかなと思っていると白鳥が「そろそろ戻るか。」と言って立ち上がった。白鳥が立ち上がったことによって宙に浮いた手と腕がぶらんと少し揺れたけど揺れたのは腕だけじゃなくて白鳥の瞳もだった。繋がった手に視線を向けた瞬間白鳥の黒目がちな眼球が大きく揺れて繋がった手がバッと勢いよく離された。

「ちっ違うからな!はっ離し忘れてただけというかなんというかその......」

離されたかと思えばごにょごにょと何やら言い出した白鳥。取り乱した姿はいつもの白鳥らしくない。何か悪いものでも食べたのかなと思いながら「とりあえず教室に戻ろ。」と言うと「そっそうだったな...戻るか。」と歯切れの悪い返事が返ってきた。ますます様子のおかしい白鳥に悪いものを食べた説は濃厚であると思ってるうちに教室に到着して席が離れている白鳥とは教室に入ってすぐに別れることになった。

「じゃあね。」
「...ああ。」

最後までどこかおかしい白鳥のことを疑問に思いながら私は自分の席へ座って机の中から教科書を取り出す。
空調の効いた教室の中で手の汗が急速に冷えていってそれはひんやりとしていて気持ちよかった。


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「ずるくない?え、どう考えてもずるいよね。だって普段あんなぼーっとしてて授業中だってしょっちゅう寝てて髪だって寝癖じゃどうかわかんないような腑抜けた髪型で試しにボールペンを髪に巻きつけていつ気付くかなってしてみたら全然気付かなかったようなバカな奴なのに、なんで、なんでっ.....!!!古都野ってサッカーやってる時はあんなかっこいいの!?」

平凡な平日の学校の中庭。クラスメイトのみょうじに急に連れられやってきたその先でみょうじはマシンガントークで自分の胸のうちを打ち明けた。馬鹿みたいに要領悪くベラベラ話した話を要約するのは容易くつまりみょうじは古都野がかっこいいと言いたかったようだ。

「ああ、うん。確かにかわいいよなアフリカオオコノハズク。」

全くなんの話かと思えばそんな話かと聞いていないふりをして全く関係のないことをいうと話を聞け!と彼女が自身の太ももを叩いた。

「ちゃんと聞いてるって。あれだろどの種のフクロウが好きかって話だろ。」
「まったくもって聞いてないじゃん!!てかさっきのフクロウの名前かい!てっきり木の葉のクズだと思ってたわ、落ち葉だと思ったわ。」
「アフリカオオコノハズクだクズ。」
「言ったな、今ズクでカモフラしてクズって言ったな。カモフラできてないからな!」

そんなみょうじに追い打ちをかけるとまるで犬のようにきゃんきゃんうるさく吠えた。全くマシンガントークにツッコミに忙しい奴だと内心呆れながらみょうじを見る。近頃暑くなりだした陽気のせいで今日訪れたばかりの時は閑散として静かだった中庭も彼女の存在一つで騒々しいものとなった。


「話戻すけど!サッカーしてる古都野最高にかっこよくない?てかかっこよすぎない!?」
「はいはい、かっこいいな。」
「真剣にボールを追いかける顔がほんと最高だわ...。」

適当に返されることに慣れたのかみょうじは俺の返事にとくに食って掛かってくることなく彼女の中で急上昇しているらしい古都野の存在を1人で噛み締めだした。だらしなく緩んだ頬が織りなす顔は笑顔で心なしか少し赤みを帯びている気もしなくはない。


「お前さ、」
「なに?」
「.......古都野のこと好きなわけ?」

その顔を見ていると無性に苛々して仕方がなく膝に肘をつきながらほんの茶化す気持ちでみょうじに問うとみょうじは目を見開いて「ん?」と聞き返してきた。

「だから古都野のこと好きなのか?」

馬鹿め、耳まで遠くなったのか。と正直な気持ちを言いたかったまたくだらない言い合いが始まりそうなので言いたい気持ちを抑えて訊ねた。....するとみょうじの顔が真っ赤に色づいた。

「なっ....!好きな訳ないし!」
「顔すごい赤いぞ。」
「だっだって最近暑いし!」

そう言うとみょうじは「あー、暑い暑い!」と手をうちわにして扇ぎ出した。風なんて1ミリほどしか来ないだろうそのうちわを見てみると手が僅かに震えていて前を向いている彼女の目が微かに揺れている。

「...まあ確かに暑いよな今日。」

まさか、まさか本当にみょうじは、と心が嫌なざわつきを見せて溢れそうな気持ちを殺しながらとりあえず当たり障りのない言葉を口にする。ドクンドクンと焦りから高鳴って行く心臓にみょうじの古都野に対する可能性と共に自身の可能性も浮上する。いや、でもまさか、そんな筈はと顔に出さないように努めながら可能性を否定し続けているとみょうじの手が伸びてきて急に頬を掴まれた。

「おい!何すんだ!」

掴まれた途端に体に熱が走って体を性急に起こし声をあげるとみょうじも同じような調子で「あんたが余計なこと言うからお返し!」と頬を赤くしたまま言った。

「余計なことじゃなくて俺は思ったことを言ったまでだ!」
「あー!もー!うるさいうるさい!」

言い返すと声が大きくなり頬を引く力も強くなる。こいつめ...!と一喝入れるためにとりあえずみょうじの手を退かさねばと手を近づけたがその手は目の前で笑顔を浮かべるみょうじのせいで止まってしまった。ぎゅうと心臓が何かに押されているような圧迫感を覚え微かに痛み気付いた時には俺の頬を掴むその手に俺の手が重なっていた。離さまいと無意識のうちに彼女の小さな手の指の間に指を滑らせ強く握る。そんな俺を不思議そうな目で見つめながら「しっ白鳥...?」と俺の名前を呼んだみょうじの姿にハッとする。

「あっいっいい加減にしろよ!肌に余計な刺激を与えないでくれ。」

口から溢れた言葉はどこか言い訳がましく現に熱い顔を、染まっているだろう頬や耳に対する言い訳でしかなかった。

「肌弱いの?」
「生まれつき日光とか外的な刺激に弱いんだ。」

しかし馬鹿な目の前のクラスメイトはそんな言い訳に気付くはずがなかった。ふざけた様子が一転心配そうな面持ちで訊ねてきたみょうじに真実を織り交ぜながら言うとシュンとしながら謝罪を述べられた。

「べっ別にお前のためじゃなくて外の空気を吸いたかっただけだから。」

そんな様子に調子を狂わされつつも出てきた言葉は普段通りでいつもみょうじに向けている甘さなんて0な言葉だった。そんな俺の返答に「ならいいけど。」と返してきたみょうじの立ち直りは非常に早く全く現金なやつだと心の中で呟きながら景色に目を向ける。ふと視界に入った野外用の掛け時計が目に入り昼休みの終わりが迫ってきていた。ギリギリに戻ると水神矢がうるさいしそろそろ戻ろうとみょうじに声をかけ先に立ち上がったが片方の腕がついて来ずピンと引っ張られた。途端に手にある小さな存在を思い出し俺は繋がった手を勢いよく離した。ぴったりとさっきまでくっついていた手は汗をかいていたがその手はどこまでも熱い。

「ちっ違うからな!はっ離し忘れてただけというかなんというかその......」

過剰に反応しすぎたという後悔の気持ちか、はたまた自身から目に前の彼女に向かっている可能性に焦りを覚えているからか唇が言い訳紡ぎ出したがみょうじは平常心といった様子だった。

「とりあえず教室に戻ろ。」
「そっそうだったな...戻るか。」

中庭に来た時とは対照的な俺たちの姿、そしてつい今さっきまで体の一部が触れ合っていたにも関わらず朱の色が落ちたみょうじの顔に心臓が締め付けられみょうじの言葉に対して発した返事は自分が思っている以上に歯切れの悪いものになった。

どこか長く感じた教室までの道のりのあと教室に足を踏み入れると「じゃあね。」と言ってみょうじは自分の席へと行ってしまった。「あぁ...」と最後まで情けない返事を返して俺も自分の席へと向かう。

「戻ったのか白鳥。」
「あっああ...」

向かった自分の席の隣の席である水神矢に声をかけられながら席に腰を下ろして教科書を取り出す。

「顔が赤いがもしかして焼けたのか?」
「...中庭にいたからな。」
「サッカー以外は日を極力避けたがる白鳥にしては珍しいな。」

特に探る意図のない口ぶりで言った水神矢は俺の返事を求めることなく教科書を開き前回やったページに目を通し始めた。

珍しい.....か、と繋がっていた手のひらをじっと見つめる。クーラーの冷気によって冷やされていく手の平に残るみょうじの手の熱が名残惜しくてぐっと手を握ると乾きかけていた汗が手のひらに広がった。