名はパブロフ(狩屋)
Not媚薬。ウイスキーボンボンです。オネショタ。
一応円堂たち同い年設定。
超高層マンション、つまりタワーマンションの一室に俺はいた。広々とした空間にバーのような..まあバー行ったことねえけどそんな感じのムーディーな雰囲気。そして座っているふかふかなソファーのまっすぐ先にある大きな窓から見える都市の燦々と輝く夜景。
「....夜景キレイですね。」
「でしょ、景色が良くてここに決めたんだよね。」
場違いな場所に存在していることに緊張が止まらない中で言うとかっかっ彼女...であるなまえさんはチューハイの缶をご機嫌そうに傾けながら言った。CMで見たことのある大衆的な缶チューハイを飲むなまえさん。この空間に存在するにはチープなそれもなまえさんが飲んでいるとまるで一つのCMのようだ...なんて思ってしまうのは惚れた弱みというやつなのかな...なんつって。
「...狩屋くん」
「なっなんですか!?」
スっとなまえさんが俺のそばに寄ってきた。そして俺の肩に手を置いて俺の目をじっと見つめる。なんだなんだとドキドキしながら吸い込まれそうな黒目を見つめていると瞳が弓なりに細められた。
「緊張してるでしょ。家きてからずっと肩が固まってる。」
スルッと肩から腕を撫でるなまえさんの手。シャツ一枚越しに滑り落ちる手がこそばゆくて身をよじるとなまえさんはまた笑った。
「ちょっとからかわないで下さいよ!」
触れられた腕を手で押さえながら言うけどなまえさんはごめんごめんと軽く謝るだけで笑みは崩さない。やっぱり年上なだけあってなまえさんには敵わない。なまえさんの年の差からくる余裕や発言、行動、全てにおいて俺は敵わない。同級生や1個2個上の先輩なら簡単に翻弄したりできるけどさすがに11個上となると勝手が違ってくる。
「...狩屋くん、はい。」
「はい...?」
なんて思っているとズイッとなまえさんが急に差し出してきた何やらおかしな形をした茶色の塊。そのビジュアルと匂いにチョコレートですかと聞くとなまえさんは首を縦に振った。
「緊張している時は甘いものだよ。どうぞ。」
甘いものは嫌いじゃないというか寧ろ好きな部類に入る。そんな俺が甘い物の王道チョコレートを拒否するはず無かった。ありがとうございますとなまえさんの指から受け取ろうとするとなまえさんは指を引っ込めた。
「違う、あーん。」
「....あーんですか」
「うん、あーんして。」
まじか...あーんか...まじか...いやいや!!!さすがにこの年であーんとか、しかもなまえさんから食べさせてもらうとか....
(多福感で死ねる。)
違う、そうじゃないだろ。恥ずかしさで死ねるだろ。いや、間違いではないけども!!
なんて1人混乱状態にいるとなまえさんが溶けちゃうから速く。と言って再びチョコレートを差し出してきた。さっきよりより口元に近い位置に。チョコレートを見ると少し溶け始めていてなまえさんの白い指に滲んでいる。チラッと視線を上げるとジィーっと俺を見つめているなまえさんと目があった。
「じゃっじゃあいただきます....」
これ以上溶けてなまえさんの指が汚れるのも...なんていうのは建前でただただなまえさんの指からチョコレートを頂きたくて俺は口を開けた。するとなまえさんは満足げに笑って俺の口にチョコレートを入れた。それを歯で噛むとジュワと何かが舌を刺激した。シロップのようなそれは甘くて不思議な香りがした。...なんだこれ。まあめちゃくちゃ美味しいからなんでもいっか。
「美味しい?」
「おいしいです。」
「よかった。...はいじゃああーん。」
すかさずなまえさんは机の上からチョコレートを取ると再び俺の口の前に持ってきた。一度あーんしてしまえば恥ずかしさも薄れて俺は口を開いてなまえさんからのチョコレートを口に入れて咀嚼した。その後もなまえさんは俺の口に一つ、また一つとチョコレートを運んだ。
「狩屋くん、あーんして?」
もう何個目だろうと思いながらなまえさんの言葉に反射的に口を開ける。あまいチョコレートに甘いシロップ。何個も食べているうちに何故かボーッとしてきた。理由は分からないけどなんだか身体も熱い。
(まさか急に風邪?)
なんかちょっと瞼も重いしとチョコレートを噛みながら身体をソファに預ける。じゅわりと口の中に広がるシロップを口の中で持て余しているとなまえさんの顔がゆっくりと近づいてきた。
「狩屋くん。」
いつに無く真剣な眼差しで俺を見るなまえさん。一体全体どうしたんだと開ききらない目で見ているとなまえさんは更に顔を近づけて来た。そしてふにゅっと唇に柔らかいものが当たった。すぐ目の前にあるのは瞼を閉じたなまえさんの顔。
(...もしかして今俺キスされてる??)
思考が回りきらないけどなまえさんの顔の近さや唇の感触的にキスされているに間違いはないと思う。柔らかいなまえさんのそれは俺の下唇をはむはむと挟みながら舌を這わす。その感触にビクッと身体が動いて唇が逃れようとしたけど後頭部を掴まれてそれは叶わなかった。下唇を這う舌は口内に入ってきて俺の歯列をなぞったかと思うと半開きになった歯をこじ開けて中まで侵入してきた。歯列の裏を這うの感触、俺の舌に絡まる熱さ、そして上顎を先端で刺激するそれに感じたことのない感覚...快感に似たそれを憶える。上手く呼吸することが出来ず空気を求めてなまえさんの肩を押すけど酸素が足りないからか力がうまく入らない。そんな俺の手になまえさんは指を這わせ俺の手の甲を包むと指を絡めた。
絡まる舌に絡まる手、なまえさんから与えられる新しい感覚や快感にただただ身を委ねているとやっと唇が離された。俺の唇となまえさんの唇の間に唾液の糸が掛かる。なまえさんの身体が離れると糸は伸びてプツンと切れた。その糸が切れたあとも俺は放心状態でボーっと糸を見つめているとマサキくん、と甘い声で名前を呼ばれた。今下の名前で呼ばれた!なんて頭の処理が追いついてない俺にいちいち感動している余裕はなく、はい...と力無い声量で返事を返した。俺の返事になまえさんは唇に弧を描くと俺のほっぺたを手の甲で撫で上げる。撫でられた方の目を僅かに細めるとなまえさんは笑みを濃くした。
「ねえマサキくん、苦しそうだから楽にしてあげるね。」
さすっとなまえさんが摩ったのは男の敏感な部分。触れられて一瞬肩が跳ねたけどなまえさんの言葉を抵抗する力も理性も残ってない。
「...好きにして下さい」
蕩けてしまっているであろう目で彼女を見つめながら言うと視界の先でなまえさんはとっても綺麗に微笑んだ。
夜景よりなまえさんの笑顔の方がうんと素敵だ。
そんなロマンチックな感想を心の中で放出しているうちにお腹に巻いたベルトが外された。