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ロイド館長と年下配達員夢主(テガミバチ)


「付き合うにあたって何か約束とか守ってほしいことってありますか。」

至って真面目に聞いたつもりだった。だけど館長は一瞬驚いた顔をすると次には唇が三日月を描いた。

「おかしなことを言うんだね君は。」

おかしなことなのだろうか、世間一般の恋人は浮気は駄目だの連絡はマメに欲しいだの約束事を決めるはずなのに。その節を言うため口を開こうとした瞬間、館長の手が伸びてきて頭を撫でた。やわやわと私の頭を小さく往来する大きく冷たい手。急にどうしたのだろうかと館長を見ると目が優しそうに細められている。妖艶にも見える顔にドキドキしていると薄い唇を小さく開いた。

「約束事も守ってほしいこともない。お互い自由にやっていけたらいいと僕は思うよ。」

頭を撫でたままに彼は言った。優しさにあふれた顔に自由という開放的かつ甘美な響き。確かに自由こそが至高といえるだろう。だけど恋人になるにあたって自由という言葉はどこか物悲しい。

「浮気は駄目とかそういうのもないんですか。」
「浮気だって...?もしかして浮気するつもりなの?」
「しっしません!絶対しないです!」

頭を振って強く否定すると館長はそういうことだよ、と言った。

「僕は名前を信頼している。君だって僕を信頼してくれている。それで十分。」
「たっ確かにそうですけど…」

信頼している、とても嬉しくて素敵な言葉なはずなのにどこかやっぱり淋しく思ってしまう私は随分と我儘みたいだ。そんな私の心の内を知ってか知らずか館長は私の顔を覗き込んでどうかした?と聞いてきた。はっきりと淋しいですと言ってしまってもよかったけどいう寸前で言うのを躊躇した。
私より幾つも大人な館長に子供っぽいと思われてしまうかもしれない、それによって失望されてしまうかもしれない。そんな不安に駆られて私は正直な心のうちを話すのをやめた。せっかく恋人同士になれたのにこんなところで躓いていられない。淋しさなんて見て見ぬ振りをすればいいんだ、そう自分に言い聞かせていた矢先手に置かれた館長の手がスルリと降りてきた。長い指先が私の髪を撫でらかに梳いて耳にかけ、その手を頬に添えた。右耳に触れる手に体を震わすとロイド館長は小さく笑った。

「僕は身勝手だ。」
「へ...?」
「もしかしたらある日突然フラッといなくなってしまうかもしれない。僕はそうなってしまったとき君に待っていてほしいなんて偉そうなこと言わないよ。待たずに自由に行ってくれればって思う。」

館長が何を言いたいのかわかる気がした。彼らしい言葉だと思った。同時に見て見ぬ振りをすると決めた筈の淋しさがさっきよりも大きな波になって襲ってきた。だって待たなくていいななんて、さっき信頼していると口にした言葉と矛盾している。自分が居なくなったら去ってしまうような、そんな薄情な人間だと思われていると考えたら無性に悲しくなった。

「...待ちますよ、私は。」
「名前?」
「信頼しあってるって館長さっき言ったじゃないですか、じゃあ自由でいいだとか待たなくていいだとかそんなこと言わないでください。私は館長が帰ってくることを信じてずっと待ちます。」

館長の言葉にわかりました。と素直に首を縦に振ることができず、結局思っていることを口に出してしまった。少し泣きそうになりながら必死で自分の想いを伝えると館長はそんな私とは対照的に何がおかしいのか急に笑い出した。なんで笑うんですか!と少しムキになって言うと館長の手が伸びてきた。

「まったく...君は生意気言ってくれるね。」

伸びてきた手は私の頬に添えられ館長の指がむいっと頬の肉を摘んだ。どうやら私の言葉は生意気だったらしい。だからと言って素直な自分の気持ちだったので謝罪する気は無い。館長がそう思うなら生意気なままでいいです。と言うと頬の肉を摘んでいる指がそっと唇に添えられた。

「ストップ、今は館長っていうの禁止。」

じゃあなんと呼べばいいんですか。と言いたいけど唇に指を押し当てられて口を開くことができない。唇から直に感じる館長の少し乾いた指の感触にドキドキしながら次の言葉を待っていると館長はふふっと笑って私の耳元に唇寄せた。

「二人きりのときはロイドね。」

約束だよ。
男性特有のテノールが鼓膜を揺らした。その擽ったさに身体中が熱を帯びて反射的に身を引くと肩をつかまれ抱き竦められた。

「生意気な名前ちゃん、返事は?」
「はっはい…!」
「よろしい。」

館ちょ...じゃなくてロッロイドさんは満足げに言うと私の耳にフッと息を吹きかけた。いきなりの出来事にひっ!と声を上げた私の姿にロイドさんが飽きないなあ。と小さな声で呟いていたのは私の知らないお話。


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歴代見てきたアニメ漫画の中の登場人物でもトップ3に入るくらい大好きなテガミバチのラルゴロイドさんです。ラルゴが名前だからラルゴって呼ばせるべきだと思うんですがどうもロイドと呼びたくなってしまうんですよね彼のことは。ラルゴロイドさんの存在だけじゃなくテガミバチは人生生きていて出会えてよかったなと思える作品の一つです。一年に一回くらい再燃しては夢の少なさに落胆し、泣き、自給自足というサイクルをここ三年くらい続けています。原作も一年以上前に最終回を迎えたのでもうこれから新しいみんなの姿を見ることは無いんだろうな考えると辛いです。