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夜天光と前世の記憶がない夢主(セラムン)


キラリ、真っ暗な空に一筋の光が一直線に伸びて瞬く間に消えていった。

(....流星雨)

ここ最近毎日のように流れる流星雨もとい流れ星。希少価値の高い流れ星が頻繁に現れる現象に世の人々は喜んで星に願いを託しているに違いない。
あの星には一体幾つの願いが託されていったのだろう。そんな事を考えながら夜空を仰ぐ。そうやって仰ぎながら歩を進めていたせいだろうか、ドンっと何かにぶつかってしまった。カシャンと手にぶら下げていたビニール袋が落ちた。

「いったいなぁ...」
「ごっごめんなさい!!」

人にぶつかってしまったようだ。反射的に謝ったのち私はその人を一瞥した。背丈は私より少し高いくらい。月明かりしか頼りは無かったものの白い肌と腰まで伸びた艷やかな銀髪は十分に確認できた。そして夜なのになぜか目を覆っているサングラス。少し不思議に思ったが夜に不揃いなサングラスなんて気にならないくらいに幻想的な雰囲気が漂っていた。

「次から気をつけなっ....」

急に彼は言葉を詰まらせた。それはサングラス越しで目があった瞬間だ。勿論真っ暗な硝子越しに彼の目を見ることはできない、だけど確かに彼と私は目が合っている。

「きっ君は....」

まるで変声期を迎えてない少年のような声。何故かその声にどこか懐かしさを感じた。今まで聞いた記憶がないのに聞いたことのあるような曖昧でフワフワした感覚。心なしか少しばかり震えているように聞こえる彼の次の言葉を私は待った。ドクン、急激に高鳴る鼓動。理由は定かじゃない。だけど銀河で目の前の彼と私たった二人だけが投げ出された、そんな心持ちがするのだ。私の忙しない心臓が、彼の震えている薄い唇が全てが夢心地のような、はたまたリアルのような妙な緊張感があった。


「夜天~!」

そんな二人っきりの世界がプツンと糸が切れたかのように終わりを迎えた。彼の背後から彼の名前と思われる名前を叫ぶ影。私は素早く落としたビニール袋を拾うと頭を小さく下げてその場を去った。

ぶら下げたビニール袋から感じる重力は何故か久方の物に思えた。ドクンドクン、未だに煩い鼓動の意味なんて理解できるはずなくとにかく家に急いだ。

一人きりの家についたころには心臓がだいぶ収まっていた。

(さっきのは一体.....)

無重力空間に無抵抗に投げ出されたような、足場のないような感覚。なんだか今思えば夢のようにも思える。しかしビニールの中から取り出した脆いプラスチックの容器には若干のヒビが入っていてさっきの出来事を裏付けるには充分だった。じいっと暫くの間ヒビを見つめても答えは出るはずがなく幸い身が漏れ出してないプリンを皿に移そうと私は台所へ行った。


(...キンモクセイ)

ふと頭に過ぎった単語。単語と共に過ぎったのは花ではなく小さな惑星。なぜ、関係のない惑星が頭に浮かんだのだろう。そもそもキンモクセイなんて惑星授業でも聞いたことがない。そうこう考えているうちにそういえばさっきすれ違った彼から淡く金木犀の香りがしたなと関係のない事が浮かんで私は考えるのをやめた。

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「まもちゃんのお見送り? って今日だったのかあ 
。そーかそれでアイツしょげてたのか。」

放課後、美奈子ちゃんがバレーボールを器用に回しながら言った。クルクルと綺麗に回り続ける真っ白なボールボーっと見つめている間に亜美ちゃんやまこちゃんと話を進める美奈子ちゃん。

「なーんだ。折角スリーライツの予約したビデオ見せようと思ったのにっ。」
「また新しいアイドル??」

はるかの言葉に美奈子ちゃんはボールを呆気なく捨ててポスターを突き出して熱弁し始めた。本よりアイドルに対して大きな関心は無いのでポスターに目を向けずボールを拾っていると美奈子ちゃんがグルリと私の方を向いた。

「ねえ! 名前はこの三人の中じゃ誰がタイプ??」
「えっ!?」
「名前のタイプはアタシだろ?」
「お黙りになったらはるか。」

何故か集まる皆の視線。得に美奈子ちゃんからの熱気の籠もった視線が凄い。タイプもなにもたった三人の中でタイプに当てはまる人間なんて居るのかなんて野暮な事を考える。でも言うまで美奈子ちゃんの気は収まってくれなさそうだから適当に誰でもいいから指してしまおうとポスターを見た。

「えっ....」

ポスターを見た瞬間だった。私は目を見開いた。右に立っている三人の中で一番背の低い色白銀髪の彼。

(これって昨日見た.....)

私の勘違いだろうか。それにしては似すぎている。いや、でも昨日の彼はサングラスを掛けていて目が見えなかったから100%断定するのはまだ早い。

「やだっ、名前ったらもしかして見惚れちゃったの??良かったら放課後私の家で鑑賞会しましょっ!!」
「...是非お願い美奈子ちゃん。」
「えっ!!! 本気なの!?」

私がいつもアイドル関係には興味を示さないせいか美奈子ちゃんは驚いた形相で言った。それは美奈子ちゃんだけじゃなかったみたいでまこちゃんも亜美ちゃんもはるかもみちるも驚いた。

「やった!! スリーライツ友達が増えたわ!! じゃあ部活終わるまで待っててねん!」

美奈子ちゃんは私からボールを取ってピースをするとスキップで部活へ向かっていった。他の面々も私に一言残してゾロゾロと部活へ向かっていった。ただひとり、みちるを除いて。

「...なにかあったの?」
「...ううん、別に大したことじゃないから大丈夫。」
「そう、 ならいいのよ。」

ニッコリ唇になだらかな弧を描いたみちる。真っ白な肌に熟れた苺のような唇は美しく生えている。

「...流星雨、今日も降るかしら。」

ふと窓の外を見上げて呟いたみちるにさあねと私は返した。まだまだ朱が交じる気配もない空を仰ぐと月明かりに照らされら銀髪が脳裏に浮かんだ。

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「いつもあなたは一人でここにいたの?」

誰かが私に語りかける。美しいソプラノ声。

「ええ。」

私、と思われる人物の型は見えた。戦士の服を纏った私。けれど語りかける人物は一切見えない

「....悲しくないの?」
「それが私の使命だから。」

純粋無垢なクリスタルで型どられた広すぎる空間に私の声が小さく響く。手袋越しでも触れれば冷たいクリスタルの柱。滑り落ちてしまいそうな手を置いているとそこに手が重なる。まるで夜空のようにの漆黒に輝いた手袋から伝わる体温なんてない。だけど確かに触れ合っているという事実に胸の奥がジワジワと暖かくなっていく。

「じゃあこれからは私が貴女の側にいてもいいかしら。」

そっと優しく腰に回ってきた腕。首元にかかった柔らかな毛が耳に触れる。ふんわり、鼻腔を優しく刺激する金木犀の香り。

「ありがとう、ーーーーーー。」


「はっ...」

パチリ、勢い良く開いた瞳に自分自身が驚いた。

「夢か...」

長いようで短い夢。頭を抑えてついさっきまで見ていたそれを思い出そうと試みてもまるで雲を掴んでいるかのようだった。フワフワと分散して忘却の中記憶というピースが溶けていく。

「なんだったのかな....」

そう呟いていると耳に違和感を覚えた。そっと手を耳に持っていくと冷たく硬いものがあてがわれていいる。
どうやらヘッドホンを取らずに眠ってしまったようだった。未だに流れるメロディーを止めて私はヘッドホンを外した。

「キミの香りずっと....」

耳に残ったサウンドを自分でも知らず知らずのうちに口ずさんでいた。
美奈子ちゃんに借りたスリーライツのCD。DVDを見て三人の歌が気に入ってしまったのでCDを借りたのだ。強く誰かを望むしらべ。愛という表現では激しすぎる優しく強い訴えは敬愛に近いのかもしれない。でも敬愛の中に秘められた強い熱情は細やかなリズムと美しい声音で私の心に伝わってきた。...とくに夜天光というメンバーから一層強く。

「夜天光....」

DVDを見て確信した。流星を見上げた夜の彼こそ間違いなく夜天光だ。サングラスなんて関係ない。あの日聞いた声、間違いなく夜天光のものだ。
しかし疑問なのは何故夜天光が私をみて言葉を失ったかだ。それ以前に会ったことなんて一回もない。もしかしてすれ違った事があるかもしれないが彼はスーパーアイドルであって常に人に囲まれている。そんな彼がもし私とすれ違っていたとしても私の存在を覚えている可能性なんて限りなくゼロに近い。星座を形どる星々は空に上手に繋がっているのに私達の線は全く繋がらない。紡ぐ糸どころかあの夜に出逢うまでなんの接点もなかった私と夜天光。

「どういうことなのかな....」

考えても見当外れなことばかりが浮かんで答えは見当たりそうにない。そうこう考えているうちに微睡んでいく意識。意識を手放す寸前昔どこかで嗅いだような香りがした。微かな金木犀が混じった懐かしい香りだった。


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転生前は月の管轄内にあった遠い星でひとりぼっちだった主人公とそんな主人公と恋人同士だった夜天光のお話です。転生後の主人公は転生前の記憶をほとんどもっていません。管理人は夜天光も好きですがそれ以上にネプチューンが好きなのでネプチューンとの百合っぽい要素を入れたり(あくまでオチは夜天)したいなと思いなながら書いてましたがいつのまにか筆が止まってました。悲しい。