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「明日は午後練だから泊まりに来ませんか。」
「......。」

Oh...イッツ ア デジャヴ......!!
心の中でつい片言の英語で叫んでしまったのをどうぞ許してほしい。心の中で叫んだ通り今この状況はデジャヴである。どこかで聞いたことあるぞ、いやなんならほんの1週間前この場所で似たような時間に聞いたぞ。
え、泊まり?まじで?と前と同じ台詞を言ってみると前と全く同じようにほっぺ仄かに赤らめて首を縦に振る彼氏、水神矢がいた。

「うーん、今日はちょっと...」

この前の出来事というよりかは事件が頭を過ぎり私はやんわりと断りを入れた。このまま流されてしまうと前のような眠れない夜を過ごす羽目になると考えるとどうしても首を縦に振れなかった。お泊りした次の日の春菜ちゃんの純粋な眼差しを私は一生忘れない。

「着替えはお貸します。」
「ごめんね、今日は家族と食事があるからさ。」
「今日はご家族の方いらっしゃらないと言ってませんでしたか?」
「えっ...あー...そっそうだった!それは明日の予定だったわ!ごめんね!今日は親戚とご飯だったわ!」
「そうなんですか。俺の記憶が正しければご両親の不在の理由は親戚の方と旅行に行くからだったはずですが...。」
「あー!そうだった!そうだった!親戚とご飯は明後日の予定だ!最近予定多すぎて記憶が混濁してたわ!あはは!」

やばい。水神矢成龍マジでやばい。私の情報全部筒抜けじゃないか。全部私が彼に与えた情報だけれどもそれを全部記憶しているところがやばい。逃げ道を失った私はどうしようかと焦りを滲ませながら頭をフル回転させる。するとどうしたことか、今さっきまで食い気味だった水神矢が急にハッとした表情を浮かべて一歩下がった。

「そっその...名前さんがどうしても無理って言うならいいんです...。無理をさせる気はないので...。」

白い肌を更に赤くしてジッと縋るような目で私の様子を伺う水神矢。...その表情1週間前も浮かべてたよね、私はしーっかり覚えているよ。そして私が君のその表情に断る術を無くしたのも覚えていますよ。つまり私は水神矢のその表情に滅法弱いのだ。しかも押せ押せから急に引いてくるなんてプロか、駆け引きのプロなのか。どこか申し訳なさそうにも見える水神矢の顔に別に悪いことはしてないのに罪悪感が胸を覆う。

「べっ別に無理してるわけじゃないよ。」
「じゃあ来てくれるんですね...!」

私の言葉に少し表情が明るくなった水神矢。...ほんとずるいよね。普段は頼れるキャプテン風吹かしているくせに私の前ではそんな顔しちゃうんだから。もしかして狙ってる?自分のその綺麗な顔を最大利用する術をどこかで覚えてきたのかな。まあ狙っているにせよ、いないにせよお泊りすることは確定してしまった。罠があるのをわかっていて水神矢宅にホイホイ赴く私は佐曽塚以上の馬鹿で間違いない。なんだかんだ言って水神矢に甘い私である。

前のように部員たちから好奇な視線とからかいを受けながら電車を降りて改札をでて二人並んで歩く。歩きながら今晩も前回のような事件が起きるのではと考えると足取りが重い。いやでも今日はご両親がご在宅かもしれなし今日のお泊りにはきっと深い意味はなく両親の旅行で私が家で一人ぼっちになってしまうからと気を遣っての行動なのかもしれない。そうだ、きっとそうだ。今日だってさりげなく車道側を歩いてくれる気遣いのプロを信じるんだ自分!自分の彼氏を信じるんだ自分!

......とギリギリまで水神矢を信じていた私だったけど水神矢宅の扉を開けた先が真っ暗で信じていた時間の全てが無駄になった。

「ごっ...ご両親は?」
「親戚の家に行っていて今日は帰ってこないんです。」
「へっへぇー...。」

微かな希望を持って聞いてみたけど希望は打ち砕かれた。やばい、このままじゃまた目元にクマを作る羽目になるぞ、と焦り出す。時間を早送りして明日の朝まで飛ばしてしまいたいと心の底から思ったけど世宇子中学のキャプテンの必殺技によって時間は止めることはできても、早送り機能はこの世界には存在してなかった。まったく不便な世界である。
どうしようどうしようと焦っているうちに食事が終わり、ソファで寛ぎタイム(全く寛げなかった)が終わり、遂にシャワーの時間になった。

やばい、もう時間がないぞ。と前回同様先にシャワーを浴びながら今夜をどう乗り越えようかと脳みその全機能を利用して考える。リビングのソファで寝かせてもらうとか?いや、何故ですかって聞かれた時に上手く言い返せる自信がない。両親が急遽帰ってきたから帰るとか?いや、遅いので送りますとか言われたら終わりだ。困ったな、いい案が全然浮かんでこない。私の脳の限界はここまでなのか...と落胆していた矢先、ピン!と頭に一つのアイデアが浮かんだ。

(...水神矢はむっつり属性。つまりその属性を利用すればいいんだ。うん、もうこれしか打つ手はない。)

導き出されたアイデアにかけることを心に決め、はシャワーを済ませるとシャワー室を出た。

帰りにコンビニで購入した下着を着用して彼から借りたパジャマに腕を通し、ドライヤーと歯ブラシを済ませた私は決戦の場、水神矢の私室に入りベッドの上に腰をかけ彼がくるのを待った。スンスンと前回と同じパジャマの匂いを嗅いでみると洗濯をしてくれたのか柔軟剤の匂いがした。
アロマソープの優しい香りを吸いながら心を落ち着かせていると水神矢がやってきた。待たせてすみません。と謝罪を述べながら隣に腰かけた水神矢に大丈夫だよ。と返すとジッと見つめられた。キリッとした表情でこちらを見る水神矢に今夜はむっつりナイトではなくがっつりナイトの可能性を憂慮したけど心配は心配のままで終わって前と同じようにほっぺにキスを落としただけで真っ赤になった水神矢が目の前にいた。うん、いいんだ、それでいいんだ。がっつりナイトは想定に入れていないからそっち方向に進まれたら逆に困る。

「今日はもう寝よっか。」
「...はい。」

顔を赤くして視線を逸らす水神矢に言うとそう返事が返ってきて水神矢は立ち上がって照明を消した。そして2人でベッドに潜り込んだ。...ただ前回は背を向けていたのに対して私は水神矢の方を向いてベッドに寝転んだ。

「おやすみ水神矢。」

暗闇の中顔の見えない彼に私は勝ち誇った表情を浮かべて言った。この前彼に背中を向けたせいでああいう事件が起きたのなら今回は背を向けなければ良いんだ。つまり水神矢の方を向いて寝ればもうあんなことは起こらない。未だに唇にキスもできない目の前のむっつりすけべに正面からやらしいことをする勇気はきっとない。きっとではなく絶対ない。そう信じたい。
悪いが今回はされるがままにならないぞ!と一人息巻いていると水神矢からおやすみなさい、と返事が返ってきた。私に背中を向けたままの彼に何もしてくれるなよ、と心の中で念を押して私は瞳を閉じた。


「さん...、名前さん..」

浅い眠りについていた私の意識に潜り込んできた私を呼ぶ水神矢の声。なんの用だ、私は眠いんだ、とその声をガン無視しているとその声は止んだ。なんの用だかしらないけど地震、火事といった生命の危機に瀕した時以外私を起こさないでくれ、と再び微睡みの中に潜ろうとすると「眠ったか...」と呟く声が聞こえた。

まて、眠ったか...だって?

その言葉に本能が緊急の黄信号を発信したので私は眠るのを急遽取りやめ瞳を閉じたまま全神経を尖らせた。ギシッとベッドのスプリングが軋む音と布団が擦れる音が耳に入る。多分水神矢が寝返りを打った音だ。まっまさかね...と焦りと共に高鳴ってゆく心臓。すると私の胸に何かが触れた。高鳴る心臓を宥めるかのようなゆっくりかつ優しくもにょもにょと動くそれの正体は考えるまでもなく水神矢の手だ。
どうやらむっつりに正面からことに及ぶ勇気は無いと考えていた私の読みは甘かったようだ。読みが甘い!とマネージャーでなく選手だったら鬼道くんに怒られるところだ。なんて気を紛らわせるために全く関係のないことを考えてみたけど全く紛らわない。優しい手つきとは反してバクバクと高鳴って行く鼓動。ただ幸いなのは前回とは違って正面を向き合っているから耳への刺激がないところだ。頼むから胸だけで終わってくれと祈りながら水神矢の手の動きが止まるのをジッと待つ。


「はぁ...っはぁ...」

だけどその手つきは次第に激しくなっていって水神矢の荒い呼吸が耳に入ってくる。もにょもにょと最初は控えめに下から掬い上げるように揉んでいただけだったけどその手は揉む範囲を広げ今では私の胸全体を手で覆ってぎゅうぎゅうと揉みしだいている。ぐにゃぐにゃと自分じゃない人間の手によって形を変えられる感覚は初めてのもので違和感が頭の中を埋め尽くす。そして違和感と共にじわじわと中心から広がってゆく熱に私は歯を噛み締めた...次の瞬間だった。

「っ...!」

ギュッと水神矢の指が胸の中心を捉えて摘んだのだ。敏感な部分へ与えられた突然の刺激に肩が一瞬跳ねて声が出そうになった。どうやら私の胸に夢中らしい水神矢は跳ねた肩に気付いていないようで先端を摘んだり全体を揉んだりを緩急をつけて何度も繰り返す。男は女性の胸へロマンを抱くというけど正しく目の前の彼氏がまさにそうで弄るは手は止まることを知らないようだ。与えられる刺激と共に上昇して行く熱と比例して背中に薄っすら汗が滲む。早く、早く終わってくれと心の中で唱えながら瞼をキュッと閉じて手が止まるのを待った。

実際のところほんの数分にすぎない時間だったのかも知れないけど私にとっては数十分にも思える時間が過ぎた頃、遂に手の動きが止まった。やっと止まったか、と本来なら一息つくところなんだろうけど止まったころにはすっかり身体中が熱くて与え続けられた刺激のお陰で背中だけでなく太ももにも汗が滲んでいてそれどころじゃなかった。熱い頭はもう色々と考えることを放棄していて本能的に望むのは更なる刺激だった。微かに残った理性のカケラが刺激を望む私に警鐘を鳴らすけど警鐘に耳を傾け争う力はもう残っていない。

グイッ、前のようにお腹に腕が回されてお互いの半身が密着する。前回お尻に当たった硬いそれは私の半身の中心に当たってドキッと心臓が大きく高鳴る。そして中心にあてがわれたそれはギッギッとスプリングを軋ませながら上下に動き、私に中心に刺激を与えた。水神矢のそれが布越しにパンツのクロッチ部分を擦る度に熱と共に微かな快感が身体を巡り、彼の動きが激しさを増すのに比例してその快感は大きくなっていった。急速に溶けて行く頭はさっきまで刺激を求めてはずが、どうやら膨らむ快感が恐ろしいらしい、快感から逃れようと腰をくねらせ距離を取ろうとした。だけどガッチリ回された逞しい腕はそれを許さない。更にいつのまにか彼の手が私のお尻をしっかり掴んでいたので逃れることは叶わなかった。

「はぁっ...名前さん...」

耳元に水神矢の唇が無くともお互い向き合って半身を密着させているので彼の荒い息遣いは私の顔に掛り熱の籠もった声音で囁かれる名前は私の気持ちを更に昂ぶらせた。高ぶる気持ちと同時に溜まって行く熱を吐き出そうとする唇には前回同様パジャマの袖を齧らせる。必死に腰を動かせている水神矢のことだ、きっと気づくまいと思って噛んでみたけど案の定気付いて無いようだった。こちらとしては好都合だと溜まった熱をゆっくりと布に吐き出しながら快感を受け入れる。


「はっはっ...名前さんっ名前さんっ...」

絶頂が近いのか、心なしかさっきよりも硬くなったように感じるそれはクロッチを激しく行き来して身体中により強い快感が波のように襲ってくる。濡れた下着に白くなって行く頭。白くなるのが、これ以上先に進むのが怖いという不安が湧き上がるけど腰の動きが激しさを増すとともに私の名前を繰り返し呼ぶ水神矢のおかげで不安は消え去った。


「はぁっ...名前さっ..ん!はっ...あっ...!」

水神矢から与えられる快楽に身を任せてひたすらそれを享受していると水神矢の声が一瞬裏返って次の瞬間身体が大きく揺れた。揺れたあと数回水神矢の身体が震えるのを半身で感じていると腰の動きが止まり、はっはっと荒い息を繰り返す水神矢にイッたんだと悟った。一方の私もどうやら軽く絶頂を迎えていたみたいで水神矢に与えられた快感がじんわりと延焼のように広がる感覚の中にいた。すると水神矢の腰が再びゆるゆると小さく動き出した。まさかの2ラウンド開始か、とボンヤリした頭で考えたけどその動きは直ぐに止んだ。何だったんだろうと思っていると水神矢は深く息を吸ったり吐いたりして息を整え始めた。暫くして息が整うとベッドが軋む音の後扉が開き控えめに閉じられる音がした。

水神矢が去ったあとのベッドで私は前のように起き上がることは無かった。ただ口に溜まった息を吐き出して寝返りを打ち瞼を開けた先に広がっている暗闇をボーッと見つめていた。
下着がぐっしょり濡れていて明らかに前回より状況が悪化しているにも関わらず身体を襲う倦怠感のせいか焦りは無かった。
そうやって見つめているうちに瞼が急激に重くなって睡魔が眠りの世界に誘う。前よりも下着が濡れていて気持ち悪いはずなのに可笑しいなと思いながら誘われるがままに睡魔に身をまかせた。


「おやすみなさい、名前さん。」

意識が無くなる寸前に耳に響いた若干掠れた声音、そして額に感じた柔らかい感触はどこまでも優しかった。