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けたたましいアラームの音が私の部屋に鳴り響く。曲はベートーベンの一番有名なあのダダダダーン!ダダダダーン!のやつだ。元からスマホに入っていた曲で他のものに比べたら群を抜いてうるさかったからこれにしている。登校前からまるで遅刻したような絶望感を感じ即目が覚めるからオススメである。キラキラ星とかもあったけどあんなの聞いてたら寝てしまうよね。
しかしもう朝か...と先日落としたせいでバッキバキに割れたスマホの画面を半目で見ると時計が指す時間は4:00である。はてなんでこんな時間に何故アラームが?と思ったけどきっとバカな私のことだ、時間を間違えて設定したんだろう。やだユカってばおっちょこちょいなんだからっ!と謎にぶりっ子してアラームを切ってスマホを置き微睡む意識に身を任せ......かけたその時だった、スマホに着信が入ったのは。トークアプリからの着信だと知らせる着信音にこんな非常識な時間に電話するなんて頭大丈夫かと眉間に皺を寄せ相手の名前も見ずに電話に出た。

「おかけになった電話の主は只今お休み中です。起床時間は6:00の予定ですので後ほどお掛け直しください。」
「聞いたかゴーレム、留守電がユカさんの声だぞ。」
「都会の携帯はこんなこともできるんでゴスね!!」

いやユカさんの声っていうか本人の肉声です。トークアプリに留守電機能無いから、と突っ込み終わったところで私はハッとしてガバッと上体を起こして電話に向かって「おはよう!」と叫んだ。

「あっ出たぞ。おはようございますユカさん。」
「おはようございますでゴスユカさん。」
「おはよう!電話ありがとうね!決して忘れてた訳じゃないよ!忘れて二度寝かまそうとしてた訳じゃないし自分から電話してって頼んでおいてこんな非常識な時間に電話しやがって!って逆ギレしてたわけじゃないから!ちゃんとベーコンベンの運命で目を覚ましたから!」

なんだか焦りすぎてかなり余計なことを言ってしまった気がしているぞと思っていると「なんの話かわかりませんがベーコンベンじゃなくてベートーベンでは?」と冷静な氷浦くんの声が返ってきた。確かにそうだ、しっかりしろ受験生。でも受験科目に音楽はないもんねっ!ベーコンベンだろうがショーパンだろうが覚え方は自由だ!へへっ!なんてくだらないことを考えているうちに電話は終了して私はくーっと身体を伸ばしてベッドから出ると準備に取り掛かった。そもそもなぜこんな時間に起きることになったかと言うと昨日の出来事が起因している。

監督のゲームがGAME OVERになった後やっと練習が始まり監督の言う通りみんな守備の練習に取り掛かった。そんな練習内容に変わらず不満そうな小僧丸くんだったけど一応しっかり練習はしてくれているようで少し安堵した。そして守備の練習がしばらく続いた後コーチがピッピー!と笛を鳴らして「集合だ。」とみんなを集めた。どうやら監督が新たに何かするつもりらしく集まったみんなの目の前に「次はこれでぇす。」と黒い布に覆われた大きななにかを持ってきた。なんだかマジックが始まりそうな雰囲気にこの監督のことだし本気でマジックでもおっぱじめそうだなんて思いながら見ていると黒い布が捲られて中が露わになった。

「秘密兵器、その名も謎のくじ引きボックス3号でぇす!」
「くじ引き?」
「怪しい....」

出てきたのは私の腰くらいの高さをした正方形の大きな箱だった。一体1号2号はどこに行ったんだ。ソレハキンダンダッー!といったところだろうかと思っていると日和くんが「あやしい...」とおそらくみんなが思っているだろうことを代弁してくれた。そんな怪しい香りぷんぷんの箱から1人1票ずつ引くようにと監督が指示しみんな訝しげな表情を浮かべながら監督の言葉に従い1票ずつ引いては結果を共有して行く。どうやら氷浦くんと岩戸くんがあたりを引いたみたいだとみんなの様子を伺っていると監督が突如私、そしてつくしちゃんの目の前に現れてにっこりと笑いそしてくじ引きボックスの方に向かって腕を広げた。

「マネージャーのお二方も一票ずつどうぞ。」
「え、私たちもですか?」
「ええ、どうぞ引いてくださぁい。」

一体私たちにまで何をさせるつもりなんだと若干怖くなりながら月やら太陽やらのシールで装飾されたボックスに近づき手を入れてくじを1枚引く。私のすぐ後にくじを引いたつくしちゃんとせーのでくじを開くと私の紙にはあたり、そしてつくしちゃんの紙にははずれの文字があった。

「すっごーい!ユカちゃんあたりだね!」
「ほんとまさかのあたりだ...!」

さっきまでの怖さはどこへやら、得体の知れない何かであるにもかかわらず嬉しくなってしまった。生まれつき運が悪いのかこういうのであたりを引いたことなんてほぼ無いし。ペンギーゴで買い物するともらえる抽選券片手に半田たちと商店街のガラガラ抽選によく繰り出していたけど白玉を連発してよく呆れられたり笑われたりしたな...。白玉の景品のポケットティッシュに因んでポケットティッシュの女神というあだ名が一時期ついたくらいだ。今思えばなかなか酷いあだ名だわ...と昔のことを思い出しながらあたりくじを見つめていると監督が「では当たりのお三方はなんとっ!つらぁ〜い特訓とお仕事をサボってオーケー!!」と謎の独特な動きを見せながら言った。

「ゴス?」
「え、本当ですか?」
「はい。本当ですよ〜。」

まさかの監督のサボりオッケー発言に只々驚く。試合まで時間ないのに一体何を言ってるんだと思っていると「その代わりちょっとした雑用を手伝ってもらいます。」と言ってニコリと笑った。雑用って一体なにやらされるんだろう。私が抜けちゃうとマネージャーがつくしちゃん1人になってしまうからできればさっさと終わる用事がいいんだけど。


「とりあえずあたりを引いたお三方は明日朝5時に校門に集合してもらいますねぇ。」
「えっ、朝の5時ですか?」
「はい。あ、さ、の、5時でぇ〜す。」

パチンとウインクを添えて言った監督に絶望が襲った。5時集合ってそんなの4時起きコースじゃないか...。ちゃんと起きれる自信がない...と絶望している私に対して2人は表情を変えていない。

「5時集合か。今日は早めに寝ないとな。」
「そうでゴスね〜。」
「ねえなんで2人はそんなに余裕そうなの。」
「余裕もなにも島では早起きなんて当たり前でしたから。」
「ゴスっ!」

氷浦くんのさも当然といった発言に元気よく同調する岩戸くん。早起きって言っても早起きの範疇超えてる気がするけど島人に私たちの常識が通用するはずないよね。ほんと島育ち半端ないな〜と思っていると稲森くんが「万作はよく寝坊しますけどね!」と笑いながら言った。

「おい明日人、余計なこと言うな。」
「へえ〜寝る子は育つっていうもんね。万作くん背高いし。」
「いっいえ...そんなこと無いですけど...。」

いやそんなこと無いこと無いぞと万作くんを見たけど一瞬目が合ったかと思えば直ぐに逸らされた。少し頬を染めて帽子のつばを掴む姿に照れてるんだと理解するのにそう時間はかからなかった。いじられただけで照れるなんて見た目に反して結構照れ屋さんなんだね万作くん。

「まあとにかく遅刻は厳禁ですので氷浦くんの言う通り今日は早めに寝てくださいねっ、ユカさん。」
「厳禁って遅刻したらなにかペナルティでもあるんですか?」
「うーん、そうですねぇ.......あっ!チャイナドレスを着て校内一周なんてどうでしょう!」
「死んでも遅れません。」