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「とっとにかく!僕がオリオンの使徒だとか足首に刻印があるとか今日言った全ての言動は全部まとめて内緒にしていてくださいね!」

一星くんとロビーで話をしたあの日、一星くんはどこか焦ったように早口で言うとさっさとその場を去って行った。オリオン....オリ◯ン製菓さんのファンであることや刺青はそんなに隠すようなことだろうか。オリ◯ン製菓さんのお菓子美味しいし刺青だって海外から来たのなら全然おかしいと思われないと思うけどな。まあでも一星くんが隠したいというのなら隠しておいてあげないとね。それに一星くんは大切な同じキノコ派の人間なんだしちゃんと守ってあげなくちゃ、うんうん。

....とそんなことがあった数日後、初戦の相手韓国に勝利しホッと一安心したいところだけどラストリゾートなんてハワイを彷彿とさせるえげつないパワーを持った新必殺技を見せてくれた豪炎寺がなんと怪我によって離脱したり次の試合相手であるオーストリアの情報が一切無かったりなにかと最近不安要素が多い中、私といえば今日も普段と変わり映えしないマネージャーとしての日常を私は過ごしていた。今日の晩御飯は確かハヤシライスにするとかヨネさん言ってたっけな。ハヤシライスといえばグリンピース.......つくしちゃんに言ってグリンピースは極力入れないようにしてもらわなきゃ...いや、最悪円堂か風丸の皿に盛ればいっか、なんて思いながら廊下を歩いていると神妙な面持ちをした鬼道が立っていた。
ジムの前に腕を組んで立っている鬼道に「そんなそんなところで突っ立ってどうしたの?」と声をかけると「ああ三宅か...」と鬼道がこちらを向いた。


「ここってジム前だけど....鬼道もしかして筋トレでもするの?」
「いや少し西蔭に用があってな...」
「へえ...」

西蔭と鬼道だなんてなんともまあ珍しい組み合わせだこと。しかし鬼道から西蔭に用だなんて一体なんの用なんだろう。もしかして筋肉のつけ方を知りたいとか...?ゴーグルにドレッドにマントに更に筋肉までつけたいだなんて鬼道は一体どこへ向かって行くんだ....今でもツッコミが追いつかないくらいの要素を併せ持っているのに更に筋肉という要素を加えようとするなんて鬼道って案外欲張りなんだね....なんて筋肉モリモリの鬼道を妄想していると「三宅お前また余計なことを考えているだろう。」と言われてデコピンされた。なんでバレた!てか普通に痛い!そんな鬼道のデコピンの威力に「いったぁ....」と声を上げて蹲ると「大げさな奴だな。」と嘲笑を浴びせられた。まじで苗字に鬼って入ってるだけあって鬼だわ鬼道有人....。


「そういえば三宅、....一星について知ってることはないか。」
「一星くんについて?」

痛むデコを両手で抑えながら唐突に一星くんについて尋ねてきた鬼道を見上げるとさっきまで嘲笑を浮かべていたとは思えないくらいに顔つきが真剣だった。

「最近よくお前と話しているからな.....一星について何か知っていることがあったら教えてくれ。」
「私そんな一星くんと話してる?」
「選手以外だと1番話していると思うぞ。」
「そうかな....?」

でも確かに毎日のように側に来ては雑談をしてきてそして雑談の終わりに必ず辺りを見渡した後「あの事言ってませんよね?絶対言ったら駄目ですよ。言ったら三宅さんのことどうかしちゃいますからね。」と満面の笑みで言われる。どうかしちゃうなんて物騒な響きだけどきっとそんなやばいことはされないだろう。だって彼まだ中学一年生の12歳だよ。どっかの金持ちのボンボンと馬鹿みたいな喧嘩を繰り広げるフィールドの悪魔くんみたいに捻くれてもないしどうかしちゃうってやつもきっと足の裏擽っちゃいますよとかそういう軽い感じのものだろう。ピカピカの新人一星くんの良心を私は全力で信じたい所存です。


「とりあえずどんな些細な事でもいいから教えてくれ三宅。今まで一星に不可解な言動があったりしなかったか?」
「不可解な言動......」

不可解な言動と言われて真っ先に思い出したのはキノコタケノコ論争の後ロビーで会った時の会話である。キノコの山について同志と熱い会話を交わしていたと思っていたのになんだか途中から使徒だの刻印だの足首だの胸だの話が脱線したうえに急にディスられたりして思い返せば言動が些か不可解だった気がする。だけど結局一星くんがオリ◯ン製菓さんが好きという事で話が纏まった感じだし....それにあの日の会話は内緒にしてって一星くんに言われているし....。

はっ....!まてよ、もしや鬼道はすでに何処かからか一星くんがオリ◯ン製菓好きっ子かも知れないという情報を仕入れて私にカマをかけているのかも知れない。だとしたら一層黙っていなくちゃいけない。同じキノコ派としてタケノコ派には一切の情報は渡さないぞ....!


「鬼道に話すことはないよ。だって私は一星くんの仲間なんだから。」

キノコ派の私からタケノコ派の鬼道に話すことは何もない、とやっと痛みの引いてきたおでこから手を退けて立ち上がって言うと鬼道の顔に困惑の色が滲んだ。

「なっ仲間だと....!?三宅お前正気でそれを...!?」
「もちろん正気だよ。一星くんは大切な仲間だよ。」

この前一緒にキノコタケノコ論争したから一星くんと私がキノコ派だと知っておいて何を今更....と思っているとガッと両肩を掴まれて目の前にはかなり焦った様子の鬼道がいた。

「いっいつからだ...!まさかお前がそんな....!」
「いつからもなにもつい最近だけど....」
「最近.....!?目的は何だ!一体何がしたいんだ!!」

一星くんがキノコ派だと知ったのはつい最近だよという意を込めて言うと鬼道は更に興奮して声を荒げた。なんで今日の鬼道はこんなに熱いのだろう。前のキノコタケノコ論争の時は冷静に痛いところを突いて来る感じだったのに今日はえらい興奮しているな。でもそんな鬼道を見てると私も燃えてきて松岡◯造ばりに熱くなりたい!とか思ったけどいや、ここは敢えて冷静に......そうだな、常に冷静沈着だけど時折微笑を浮かべては相手を挑発するミステリアスな敵キャラ的立ち位置を演じてみることにした。


「...そんなの鬼道たちを倒すことに決まってるじゃない。」

両肩にある鬼道の腕を退かせて薄っすら笑顔を浮かべて私は鬼道に言った。そう我々キノコ派の目的は打倒タケノコ派でその目標は生涯変わらない。コンビニやスーパーマーケットのタケノコの里コーナーの前列2列はキノコの山にすり替えて購入を促し勿論自ら消費することも怠らずこれからも私たちは全力でタケノコ派に抵抗していくのみである。ちょっとキノコより仲間が多いからって調子に乗るなよタケノコ派め!


「みっ三宅.......」

そんな私の言葉に鬼道は私の名前を呟いた後黙ってしまった。よっぽど私が上手に演じただからだろうか窓から射し込む光によって透けたゴーグルの先に見えた鬼道の目は目ん玉が飛び出そうなくらい大きく見開かれている。へへ、私だってやればできるんだよ!

それにしてもちょっと鬼道と話しすぎたなとスマホを見るとそろそご飯の支度をする時間になっていた。もう行かないとなと「じゃあ私これからまだ仕事あるしもう行くね。」と言って私はその場を立ち去ることにした.......


「...待て、」

だけどそれは私の腕を掴んだ鬼道によって遮られる。一体全体なんだと鬼道を見ると鬼道は真剣ながらもどこか悲しさを滲ませたような顔で私を見つめている。


「三宅今なら間に合う、こっちに戻って来るんだ。これ以上あいつの....一星のそばに行くんじゃない。」
「...それって私に裏切れってこと?」
「裏切りだと....?」
「それに鬼道勘違いしないで。戻って来いだなんて言ったけど私は一度たりとも鬼道たち側にいたことなんてないから。」


口を開いたかと思えば間に合うだの戻って来いだの一星のそばに行くなだの鬼道の言動に頭にハテナがいっぱい浮かんだけど多分鬼道の中でまだキノコタケノコの話が終わっていないんだろう。だとすると鬼道の間に合うと戻って来いという発言は私のことを勝手に過去はタケノコ派だったけど今はキノコ派にいるという寝返った人間だと勝手に決めつけていることになるし一星くんの側に行くなというのもキノコ派を裏切れと私に言っているということになる。
そんな私は一度たりともタケノコ派になったことは無いし同じ派閥である一星くんに対して裏切りを働くわけ無かろうという意思を伝えると私の腕を掴む鬼道の手の力が一気に緩まり鬼道の唇が微かに震えた。震えた唇、そして震えた声音で「みっ三宅.....」と呼ぶ鬼道の様子に本当に今日の鬼道は少し可笑しいというかめちゃくちゃ感情移入するじゃん...と鬼道の精神面が少し心配になるけどまあ鬼道のことだし明日にはまた私を虐げて遊んでいることだろう。うん、きっとそうに違いないと「じゃあ私急ぐから。」と言って鬼道に背を向けた。


〜その後〜

西蔭「!鬼道さん...」
鬼道「西蔭、お前に頼みたいことがある.......一星から目を離すな。」
西蔭「...はい、わかりました。」
鬼道「......それと三宅からもだ。」
西蔭「みっ三宅さんですか.....?」
鬼道「ああ.....それとーーーーーーーーー」
西蔭「....わかりました。」


☆加速するすれ違いーーーー!一体どうなっちゃうの三宅ユカーーーー!!??