「なぁ、ちゃんと飯食ってる?」
「お節介なんですよ、そういうの」
俺の質問を、バーナビーがお節介だと切り捨てる。
これは、いつものやり取りだ。
しかし、今日は俺はそこで話をやめる気にはなれなかった。
「だからさ、食ってんの?ちゃんと」
「…今その質問したばかりですよね?」
「食ってるか食ってないか、お前一度でもそういう返事したか?」
そう、バーナビーはこういった俺の質問には"お節介です"で答えていた。
そこが気になってしまったのだ。
「…しませんでしたっけ」
「聞いてねぇな」
「……」
はぐらかす訳でも無く、バーナビーは黙っていた。
「昔…1年くらい前か?レストランに行った時。食べる前に爆弾騒ぎが起きて食べられなかったよな」
「……」
「ホァンがお前の家に来た時。チャーハン吹き飛ばされてあの後結局食べなかったな」
「……」
「俺、お前が何か食べてるところ。見たこと無いんだよな」
ぎゅっと唇を噛むバーナビーは、何も言いたくなさそうだった。
無理に言わせる気はなかったからそれとなく話題を変える。
「バニーって怪我しないよな」
「…っ、怪我は…先輩が庇ってくれたから…」
そういえば怪我は大丈夫ですか、とバーナビーに聞かれた。
何回目の質問になるだろう。その少し心配性なところも可愛いのだが。
しかし、俺はそんなバーナビーにあることを確かめなければならなかった。
「…あのさバニー」
「……はい?」
「お前、ロボットだったりしないか?」
「…えっ」
言いにくかったことでも、一度言ってしまえば気が楽になる。
俺は気になっていたことを一気にぶつけた。
「食べてるところも怪我したところも見たことねぇんだよ。しかもお前の家はそういう所だったみたいじゃねぇか。ロボットじゃないかって疑いたくもなるだろ?怪我したらそっから導線出たり…」
「先輩は僕のこと人間じゃないと思ってるんですか?」
むっとした顔でバーナビーがそう言った。
「僕はちゃんと人間です。食べますし飲みます。寝てなければ眠くなるし、怪我すれば血が出ます」
その顔は、嘘はついていなかった。
思い返せば、今自分は彼に酷いこと言ってしまったかもしれない。ロボットだなんて。
「悪かった、でも安心した」
「…人間です」
「悪かったって」
完全に拗ねてしまったバーナビーに苦笑いで謝る。
謝罪を兼ねて握った彼の手は、ひんやりと冷たかった。