「バニーちゃん、おはよ」
「……、…おはよ……」

一足早く起床した虎徹が横に引くタイプの和風な窓を開けると、そこから入ってきた光でバーナビーが薄く目を開ける。
起こしてしまったか、と虎徹がとりあえずバーナビーに挨拶すると、彼がまだ寝ぼけているらしいことがわかった。

「寝ぼけてる?」
「…?」

話しかけても、とろんとした目のまま返事をしないバーナビーの頭に手を起き、寝癖のついた髪の毛をさらにくしゃくしゃと撫でた。
その手付きが心地好かったのか、バーナビーが再び目を閉じてしまった。

酒を飲み交わしたままバーナビーが自分の膝で眠ってしまい、あのあと虎徹は彼を起こさないように細心の注意を払いつつ布団を敷いて、そこに寝かせたのだった。

薄く唇を開いて静かな寝息を立てるバーナビーの髪は、いつになく乱れていた。

「髪の毛のセット、時間掛かるんだろうなぁ」

だとすると、今日はこの付近を目一杯観光する予定なので、早いところ起きてもらわないと困る。
虎徹はバーナビーの可愛らしい寝顔を惜しみつつもその肩を揺すった。

「起きろー」
「ん……」
「バニーちゃん、おはよ」

本日二回目の挨拶をすると、今度はちゃんと覚醒したバーナビーが返事を返してくる。

「…おはようございます」

上半身を起こして目を擦るバーナビーは、まだ眠そうだった。
こういう状況でも決して大きい口を開けて欠伸をしたりと行儀の悪いことをしないあたり、流石だと虎徹は思う。

「朝飯どうする?」
「…?用意しては頂けないんですか?」
「そうみたい。ここに書いてあった」

虎徹がバーナビーの目の前に紙を差し出す。それは、出発前にロイズに渡されたメモだった。そこには旅先のあらゆる諸注意が細かく書いてあって、ロイズの几帳面さが滲み出ている。

眼鏡のしていないバーナビーはその紙を目に近付けて、文字を追っている。

「…本当ですね、僕は無くても良いですよ」
「それは駄目だ。どっか近くに食べに行こうぜ」

普段朝食を摂らないバーナビーに、虎徹はダメ出しをする。
虎徹は、人の健康には人一倍気を遣うのだ。

布団の上で髪の毛をセットするバーナビーを尻目に、虎徹はこの近辺のガイドブックを読む。
そして、不意に声を上げた虎徹にバーナビーはちらと目をやる。
虎徹はガイドブックのある1ページをバーナビーの目の前に持って行き、端の方を指差して言った。

「今日この辺で夏祭りやるって」
「夏祭り?」
「そう、花火もやるってさ!行こうぜ!」

子供のようにはしゃぐ虎徹に、バーナビーの頬には思わず笑みが浮かぶ。
交渉に対して了承の意味で頷くと、虎徹は眩しいくらいに笑って喜んだ。

「子供じゃないんですから」
「だって久々なんだよこういうの!シュテルンビルトには祭なんてねぇし」

バーナビーは年上の幼さに苦笑しつつも立ち上がる。

「お待たせしました、行きましょう」
「おー、何食べたい?」

予定も何も無計画のまま、まずは朝食を摂るべく2人は部屋をあとにした。


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