おかえりバニーちゃん、と玄関に入るなり部屋から声が掛かる。
最近、虎徹とバーナビーはどちらの提案でもなく自然に同棲していた。

だからバーナビーも特に何も考えずに虎徹の家に帰って来ているわけだが、やはり"おかえり"と言われるのはむず痒いことだった。

「戻りました、虎徹さん」

今にも恥ずかしさから歪みそうになる口元を押さえて冷静を装いながらそう答えると、虎徹が部屋から玄関まで出て来る。

「どうだった?」
「ん…」

マーベリックに突然呼び出されたバーナビーを送り出してから、虎徹は彼がバーナビーに何の用があったのか、気が気ではなかった。
結婚のことだろうと言うのは時期的に確信していて、それだけに不安だったのだ。

「なんか、言われた?」
「…いえ…、虎徹さんと、やっぱり結婚させたくないみたいです」

言いにくそうにそう告げるバーナビーを、虎徹は直視出来なかった。


「でも、虎徹さんのこと認めてましたよ、マーベリックさん」
「え?」
「結婚相手としてはまだ不満みたいですけど、人としてはきっと十分過ぎるくらい認めてくれていました」

キッチンに入りコーヒーを淹れながら、バーナビーは続けた。

「…って、なんだか凄く上から目線なんですけど。でも、きっとマーベリックさんも虎徹さんが良い人だってわかってくれました」
「…そっか、嬉しいよ」

もしかしたらずっと結婚を認めてくれないかもしれない。そんな思いの中で、マーベリックを納得させられる可能性がじわじわと出てきたことが虎徹は嬉しかった。

不意に、聞きなれた電話の鈴が鳴る。
虎徹が受話器をとって もしもし、と話しかけると、今まで話題に上っていた人物の声が聞こえた。

『鏑木虎徹か?私だ』
「社長!?」
「…っ?」

虎徹の声に、背後でバーナビーもびくりと肩を揺らす。

『私はまだ君をバーナビーの相手には認めていない』
「え…あ……はい…」

曖昧な虎徹の受け答えに不安を覚えたのであろうバーナビーが、心配そうな顔で虎徹を見る。彼にマーベリックの声は聞こえていないが、大体何を言われたのか想像出来たのだろう。

『だが、このまま約束を守られてしまったら、結婚を認めなければならないだろう?そのことで色々君達と話したくてね。近々こちらへ来てくれないだろうか』

いきなりの話に、虎徹が困惑する。

「は?え?」
『色々と決めなければならないだろう。式場とか』
「社長…!明日行きます、絶対!」

その虎徹の答えにマーベリックは軽く笑い、あとはテンプレの挨拶を交わして通話を切った。

「マーベリックさん、なんですって?」
「あぁ、明日あの人んところ行って色々決めることになった。式場とか」
「…!」

それって、と途端に表情が明るくなったバーナビーの眉が上がる。

そうだ、約束さえ守れれば、このまま結婚できるんだ。
虎徹はバーナビーを抱きしめたい衝動に駆られながらも満面の笑みを浮かべた。




[ 15/20 ]

[*prev] [next#]

[目次]
[しおりを挟む]
70


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -